The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


学会と賞

副会長 後藤尚久

 本学会の前総務理事が残した7箇条の申し送り事項の一つに、「功績賞、業 績賞の推薦方法について引続き検討を進められたい」というのがある。私はこ れらの賞の選奨委員会を担当しているため、この申し送り事項について私見を 述べたい。

 功績賞および業績賞は55名の選奨委員の投票によって決定されるが、我が学 会の規模の拡大と共にカバーする専門分野もますます広くなっている。このた め、より広い分野からの候補者の推薦方法、功績や業績に関する詳しい資料の 提供(現在の推薦用紙は200字)など、多くの意見が選奨委員から出された。

 本学会の役員、研究専門委員長など約130名が推薦母体であるから、広い分 野から候補者を推薦するのは周知方法の改善により可能と思われる。問題は55 名の選奨委員に対し、候補者の功績や業績の詳しい情報の提供にある。学会の 事務局によると、約50名の候補者のボリュームある資料を55部作製して委員 に送付するのは簡単ではないという。現在は、A4判用紙2枚くらいに要約した 功績や業績のポイントを候補者の推薦者に提出頂くことを検討している。

 学会が社会に果たす大きい役割は、会誌と論文誌の発行および全国大会や研 究会の開催にある。これからは会員同志の情報交換を促進し、科学技術の発展 に貢献しているからである。更に論文誌が掲載する論文は重要な役割を果たし ている。

 日本には、権力者や権威者でもその判定にアクセスできないものが3種ある という。それらは国立大学の入学試験、国家公務員などの資格試験、それに学 会論文誌の査読である。これが論文に価値をおく理由と思われる。実際に、博 士の学位授与や大学教授の資格認定には、これらの論文数は最も重要な参考資 料となっている。

 考えてみると、学会が授与する賞もこの論文と同じように重要な役割をもっ ている。これらの賞は論文誌に掲載される論文数よりはるかに少ないため、賞 に値する優れた論文を書き、また業績を残そうとするインセンティブを会員に 与えるからである。

 歴史的に見ると労働が生む価値とこれに対する報酬は、先進国になるほどそ の相関関係は1に近づくという。人々が賢くなっていわゆる搾取が難しくなる からである。この労働と報酬の関係は、業績と賞に対応させることができる。 ともすれば欧米の学会の賞が日本のそれより価値あるとされるのは、欧米が学 会の先進国であるためかも知れない。我が学会では、優れた業績を上げた埋も れた技術者も受賞できるようにしたいものである。


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