The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


法人と課税

監事 高梨裕文

 ソサイエティ制が動き出した.ここまでもってこられた多くの方々の並々な らぬ御努力に会員の一人として素直に敬意を払いたい.

 筆者も学会役員の一人として,その課程の一部を垣間みる機会をもったが, 生み出す情熱の根源の一つに学問的に同じ領域を自立させたグループを作りた いという信念を強く感じたのは筆者だけではあるまい.しかし,筆者が企業に いる会員の一人であるからか,また会計理事を過去に,いま監事を仰せつかっ ている経験からか,ソサイエティが現実となってくればくるほど,収支のバラ ンスや課税処置など経済的な面が気になって仕方がない.

 自立大いに結構,経済的な自立も年を重ねるに従って確立してくるものと思 われる.そのためには,ソサイエティ主体の事業を盛んにすることはいうまで もないことである.事業を盛んにすれば,収支のバランスや事業の結果起って くる課税の問題を無視することはできない.では,次のようなことを御存じだ ろうか.

 公益法人等(社団法人を含む)の活動の一つとして行う国際会議,セミナー, シンポジウムなどの開催時に関連する税金として,(1)法人税,(2)所得税, (3)消費税がある.法人税では,非収益事業から生まれた所得は非課税だが, 収益事業と認定されている 33 の事業(例えば,印刷業,出版業,飲食業等) から生じた所得は課税対象になる.例えば,論文集の発行において,代金を徴 収し所得が生じた場合(残った論文集の販売)とか,懇親会費など実費弁償な ら課税対象にならないが,そこから利益を得た場合は飲食業として課税される. また,謝金(原稿料,講演料等)を支払った場合は所得税として源泉徴収を行 う義務がある.しかし,条文や除外規定はその解釈により,個々の判断に差異 を生ずることがある.

 最近は公認会計士の責任が重くなり,承認した後問題が起った場合,公認会 計士も当事者と同等の責任を追求されることから,記名捺印には慎重にならざ るを得まい.素人解釈によって大事を生じさせないよう,企画の初期段階から 専門家の意見を求め,それを尊重して進めるよう是非お願いしたい.経済的な 自立を備えてこそ,会員に魅力的なソサイエティとしての盤石な基盤ができ, 発展が約束されよう.是非発展させて欲しいものである.


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