The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


若い人達に夢を

東海支部長 小川 明

 電子情報通信学会の会員数が平成 6,7 年をピークに漸減傾向にあると聞き ました.電子情報通信の分野が,現在の日本の経済を支え,世界的にみてもこ の分野が大きく発展しつつあることから考えると,どうしてなんだろうかと疑 問がわきます.新たに入会するのは通常若い人達でしょうが,この人達にとっ て,電子情報通信学会は魅力がないのでしょうか.それともそもそも電子情報 通信の分野が面白くないのでしょうか.

 若い人達の中で,学生層がその代表的存在と考えられますので,学生員数の 各年度末での推移をみてみますと,わずかながら右肩上がりとなっています. 学生員は,卒業すると確実に学生員ではなくなるので,どんどん増えるという 性格ではないと思われます.ところが電気学会の例をみますと,平成5年度か ら学生員数が顕著に増加しています.これは,EE-Topics という年刊の学生版 を発行したりして,3 年生を含む学部学生に積極的働きかけをしたことに効果 があったのではないかといわれています.この学生版を見ますと,学生に夢を 与えようという意図が感じられます.実際に夢をつかむのは学生自身ですが, 夢の存在を知らせることは大変重要だと思います.

 学生諸君と接していて,夢をもっている人の少なさを痛感しま す.若い人達に知識を詰め込むばかりで,夢を与える努力を怠ってきたことに 自分自身反省しています.工学系の学生は,それぞれ漠然とした夢を抱いて入 学してくるのでしょうが,1 年次での取るべき授業科目の多さと専門基礎科目 の無味乾燥さに辟易して,多くの学生がその夢を失ってしまうようです.教師 は,講義などでもっと夢を語りかけるべき,いや,語り合うべきです.特に1 年生に対してそれをすべきでしょう.

 若い人達に夢を与えることは,大学だけでなく,あらゆる機会をとらえて行 うことが大切で,本学会にもその一端を担って欲しいと思います.現在,本部 でも各支部でも学生員に対して種々の企画が行われており,それなりに効果を 挙げていると思いますが,もっと夢をはぐくむような試みはないのでしょうか. 例えば,各支部で行われている学生向け講演会で,講師にそれぞれの専門分野 について夢を語ってもらうことなどです.それと同時に4年生だけでなく,そ れより下の学年にも働きかけることが望まれます.

 若い人達に電子情報通信分野の夢を与えることによって,学生員が本学会の 会員であることの良さを認めて,卒業と同時に退会することがなくなり,ひい ては夢にあふれた意欲的な人材がこの分野に多く入ってくることを期待したい のです.


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