The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


改革と変化 ―いま学会に求められるもの―

総務理事 後藤裕一

 21世紀を迎えるとともに小泉内閣が誕生し,80%を上回る高い支持率が続いています.その支持の大きな理由は「構造改革への期待」,あるいは「変化への期待」にあるようです.「失われた10年」といわれる長期間にわたる閉塞感の中で国民が改革,変化を欲求するのはごく自然なことでしょう.

当電子情報通信学会にとっても,「改革」と「変化」の二つのキーワードは,極めて重要であると思われます.会員の多様なニーズと社会からの期待・要請に的確にこたえていくために,今後多くの改革を進め変化していかねばなりません.とりわけ,小泉改革の切り札ともいわれるIT革命が強く叫ばれる中で,IT関連分野の研究者・技術者の集合体であり,ITのリーダーを自負すべき当学会においてIT活用の面で改革・変化が必要であるように思われます.もちろんIT活用の努力はこれまでにも着実に進められ幾つかの成果も生まれています.例えば,学会ホームページの立ち上げと高度化,大会参加申し込みの全ネットワーク対応化,会員に対するメールアドレスのサービスなどが実施され大きな効果を上げていますし,更に現在幾つかのプロジェクトも進行中です.しかし今後はこのような領域にとどまらず,学会の体制や運営にまで踏み込んだ議論が必要な改革,変化を成し遂げていかねばならないのではないでしょうか.ここでは以下の二つについて考えてみたいと思います.

一つは論文誌のネットワーク化です.現在でもデスクトップパブリッシングを用いた論文誌の編集や過去発行分のCD-ROM化などが検討あるいは一部試行されていますが,最終的にはWeb上に電子掲載して出版するオンラインジャーナル化を目指すべきです.これによりネットワークを介したアクセスが自由に柔軟に行えるようになり,サーキュレーションもグローバルなスケールに拡大できるでしょう.

バックナンバーの観点からも利便性は極めて高くなるでしょう.しかもオンラインジャーナル化は,これらのベネフィットを会員のみならず非会員にも提供することができ,結果的には当学会の影響力の向上にも貢献するはずです.しかし現実的には,知的財産権における証拠性や著作権保護の問題など今後解決されるべき課題がまだ多く,理想的なオンラインジャーナルの実現までには今しばらくの時間を要すると思われます.そこに至るまではネットワークを介した論文の投稿,更にはこれに対応してのWeb上での査読などが実現されるべきでしょう.このためには,投稿論文のフォーマットや記述言語などを規定した投稿規定の整備,更には査読体制の再構築なども必要となるでしょう.

今一つは理事会及び事務局運営のネットワーク化です.一般の会員の方々は御存知ない方が多いと思いますが,現状の理事会及び事務局の運営は残念ながら「伝統的スタイル」,悪くいえば「旧来のスタイル」に基づいているといわざるを得ません.定例の理事会は会長以下の多くの役員が一堂に会し,事務局あるいは担当の役員が用意した紙ベースの資料を用いて議論が進められます.もちろん,議題には役員がこのようなスタイルでリアルに会して白熱した議論を行うべき案件が多いのですが,中には単なる報告や事前のE-mail審議で十分なものもあります.したがって今後は,ネットワーク審議が可能な案件は極力ネットワークを介したバーチャルな理事会にて審議し,リアルな会議はそれに相応しい議題に絞って行っていくことが必要でしょう.これに伴い当然事務局運営もそれに相応しいものになっていくことが求められますし,役員にも議案の採否を確実に行うために決められた期限までに確実に自己の責任を果たす意識の改革が求められます.この理事会のネットワーク化については既に平成13年度第1回理事会で議論が行われましたが,引き続いて検討を進めていきます.

以上,当面取り組むべき二つの点につき述べましたが,今後も当学会に求められる改革と変化のために微力ながら努めていきたいと思っています.


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