OB 堀 田 英 一

電子情報通信学会誌

Vol.84 No.7 pp.471-477

2001年7月
堀田英一 正員
 日本電信電話株式会社NTT情報流通プラットフォーム研究所
 E-mail horita.eiichi@lab.ntt.co.jp

Routing Technologies for High-speed Networks.By Eiichi HORITA, Member(NTT Information Sharing Platform Laboratories, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION, Musashino-shi, 180-8585 Japan).

< ABSTRACT >
 インターネットトラヒックの急増に対応し,IPを中心に据えた新たなネットワークアーキテクチャの模索が進んでいる.本稿では,次世代の超高速大容量ネットワークに対応するため新技術の開発が著しいIPルーチング技術の最新動向について,WDMなどの光伝送技術に対応した高速インタフェース,パススルートラヒックをめぐるレイヤ2/レイヤ3の技術,ルータと光クロスコネクトの連携により波長単位の経路制御を可能とするGMPLS,及び冗長構成による高信頼化という観点から考察を試みる.


キーワード:IP,ルーチング,ネットワーク,WDM

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■1.ま え が き

 インターネットを中心とするIPトラヒックは,16か月で10倍となるなど急激な伸びを示し,今後も持続するものと予想される.インターネットトラヒックのこのような急増に対応し, IPを中心に据えた新たなネットワークアーキテクチャの模索が進んでいる. 本稿では,次世代の超高速大容量ネットワークに対応するため新技術の開発が著しいIPルーチング技術の最新動向について,波長分割多重(WDM : Wavelength-Division Multiplexing)などの光伝送技術に対応した高速インタフェース,通過トラヒックをめぐるレイヤ2/レイヤ3の技術,ルータと光クロスコネクトの連携により波長単位の経路制御を可能とするGMPLS (Generalized Multi Protocol Label Switching),及び冗長構成による高信頼化という観点から考察を試みる.


■2. WDMと高速インタフェース

 近年のIPトラヒックの爆発的な伸びに対応するためのキーとなる技術が高密度波長分割多重(DWDM : Dense Wavelength Division Multiplexing)技術である.この技術により,光ファイバ当りの伝送容量を飛躍的に拡大することができると同時に,伝送速度2.5〜10 Gbit/sの高速リンクを効率良く多重化し,必要に応じて合波(add)・分波(drop)させることが可能となってきた.IPトラヒックを中心とする今後のネットワークにおいては, 一波長に複数トラヒックを時分割多重(TDM)で多重化する方向から,波長多重システムの光パスを複数用い,また,動的網構成変更により高信頼性を確保する方向へ向かうものと予想される.ここで光パスとは(波長多重システムの中で)一つの波長によって実現される通信路であり,上位レイヤの電気信号を(多重化して,あるいは単独で)その上で伝送するものである.

 WDMを基礎とする次世代の光伝送網として,ITU-TにおいてOTN(Optical Transport Network)の標準化が進められており,既に基本アーキテクチャが策定されている(図1)(1).




図1 標準化が進む高機能光伝送網:OTN




図2にOTNのレイヤ構造を示す.OTNはOChレイヤ,OMSレイヤ,OTSレイヤ の三つのレイヤからなる.

@OChレイヤ:
上位レイヤの情報(ディジタル)を透過的に伝送する光チャネルのエンドツーエンドのネットワーキングを提供する.

AOMSレイヤ:
波長多重化された光信号(複数の光チャネルに対応するもの)を波長多重セクションを通して伝送する機能を提供する.

BOTSレイヤ:
OMSレイヤと光媒体の間に位置し,波長多重された光信号を種々の光媒体を介して伝送する機能を提供する.




図2 ITU-Tで標準化が進むOptical Transport Network(OTN)








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