堀 田 英 一


■4. 通過トラヒックをめぐるレイヤ2/レイヤ3技術

 通信路の広帯域化に伴い,あるネットワークノードを通過するだけのトラヒック(passthrough traffic, 通過トラヒック)をIP等のレイヤ3で扱うことによる転送処理の非効率化が大きな問題になってくる.この問題を軽減するためのキーとなるのが,次に述べるレイヤ2多重アクセス機能である.

 まずA, B, Cという三つのノードからなるシステムについて,以下のような状況を考える(図7). まず,ノードAからノードCへパケットを送りたいが,ノードAからノードCへの直接リンクはないものとする.ただし,ノードBを経由すれば到達可能であるとする.

 ノードAから出発して,ノードBを単に通過し,ノードCに至るトラヒックを通過トラヒックといい,ノードBを通過ノードという.この際,このようなトラヒックに対してはノードBにおいてレイヤ3の転送処理が必要となる.バックボーンリンクの広帯域化につれて,ノードBのような通過ノードにおける転送処理の負荷が問題になってくる.


図7 L2多重アクセス機能


 上記は通過トラヒックをレイヤ3で処理する方式であるが,これをレイヤ2で処理することも可能である.この二つの方式の比較を図8に示す.同図(a)のルータノード処理で処理する方式では,ノードBに到着するトラヒックはすべてルータ/スイッチに送られ,そこで転送処理がなされるのに対して,同図(b)はレイヤ2多重アクセス機能を用いる方式であり,伝送系ノード(ADM)がフレームアドレスを用いて選択的アッド/ドロップを行うことにより,ルータ/スイッチは通過トラヒックの処理から解放されることになる.同図(a)のIPルーチングのみの方式では,リンク/ノード障害時の高速なう回措置が困難であるという欠点もある.同図(b)の方式では,レイヤ2でのプロテクション機能により,この欠点を改善する可能性もある.同図(b)の方式の実現例としては,シスコシステムズの開発したDPT(7)やNTTの開発したMAPOS(8)がある.


図8 レイヤ2多重アクセス機能

 通過トラヒックを避けるための方法としては,TDM/WDMでノード間をフルメッシュ接続することも可能であるが,この方式ではフルメッシュの各リンクに対してピークトラヒックに対応できるだけの帯域を確保する必要があり,統計多重のメリットを生かすことができなくなる.したがって帯域の無駄が増大することになる.





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