■3. C D M A
CDMAは符号によって多元接続を行う方法であり,FDMA(Frequency Division Multiple Access)やTDMA(Time
Division Multiple Access)に比べ,移動通信のセルラ方式において周波数の有効利用につながる.ここでは,単一周波数搬送波を持つCDMAについて解説し,4.のOFDMとCDMAの融合方式の参考にする.
3.1 DS-CDMA
DS-CDMA(Direct Sequence-CDMA)は最も利用されているCDMAの方式である.無線LANとIS-95(米国のセルラ標準の一つで日本のCDMA
oneが相当する),IMT-2000(International Mobile Telecommunications-2000)で利用されるWCDMA(Wideband
CDMA)が代表格である.この中で無線LANの多元接続能力はさほど強くなく,干渉波排除に力点がある.ここでは第3世代の移動通信としてWCDMAについて簡単に述べておく.
(1) 直交符号
セルラ方式はセルの基地局から移動局へのダウンリンク(フォワードリンク)とその逆のアップリンク(リバースリンク)からなり,複数の移動局に同期しながら伝送できるダウンリンクと,移動局の同期が地理的な条件から困難なアップリンクでは設計が異なるのが普通である.要するにダウンリンクではユーザごとに異なる拡散符号を割り当てるときに拡散符号間の相関をゼロ(直交化)にしてユーザ間の干渉をゼロにできるのに対して,アップリンクでは直交化に必要な同期がとりにくいので干渉を含むことになる.ダウンリンクの直交符号としては,ウォルシュ関数を利用することが多い.
(2) パワーコントロール
一方,アップリンクでは,基地局から遠ければ信号強度は低く,近ければ高い.このため,強度の強いユーザが弱いユーザに大きく干渉し,結局セル内の多元接続数を減らすことになる.この問題をCDMAの遠近問題と呼び,これを解決したのが,パワーコントロールであり,基地局ですべてのユーザの電界強度が等しくなるように制御することである.複数の搬送波を利用したMC-DS-CDMA(後述)のパワーコントロールも研究されている(9).
(3) Rake合成
CDMAは情報帯域よりも広い伝送帯域を利用するために,異なる伝送遅延時間を持つパスを分離して受信できる場合が多い.これらのパスの最大比合成はRake合成と呼ばれるパスダイバーシチ方式の一つであり,アップリンクにもダウンリンクにも利用される.図3は複数のパスを合成する概念である.受信機の相関器の出力にはパスを表す複数のピークが検出されるが,ピークはメインローブのみならず,サイドローブもあることを忘れてはならない.このサイドローブは拡散符号の種類によって異なるが,ゼロにすることが困難である.このため,パス間の干渉が残ることになる.拡散符号のチップごとにパスが対応することから,このパス間の干渉をチップ間干渉(Inter-Chip-Interference:ICIまたはマルチパス干渉(MPI))と呼び,大きな劣化要因になる.
図3 パスの合成 パス同士が完全に直交せず干渉する.
図4 MC-DS-CDMAの送信機 複数の搬送波に時間関数の拡散符号を変調.
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