■3. アンテナの広帯域化・多周波化

3.1 2周波プレスヘリカルアンテナ

携帯端末は小型化を実現しながらマルチバンド対応が求められている.2周波対応としては,欧州ではGSM(800MHz帯)+DCS(1,800MHz帯),北米ではAMPS/TDMA/CDMA(800MHz帯)+PCS(1,900MHz帯)などがある.また,3周波対応ではGSM+DCS+PCSなどがある.このため,アンテナも2周波/3周波対応が求められる.

このような多周波対応のヘリカルアンテナとして,精密プレス加工技術及び精密複合成形技術による「プレスコイル工法」を用いた2周波プレスヘリカルアンテナ(3),(4)が実用化されている(図3).まず図3(a)のように高周波特性に優れる銅板(無酸素銅)の薄平板を使い,ジグザグのはしご状にパンチ加工する.次に,U字状のはしご段は各段ごとに交互に逆方向に(例えば,奇数段は手前,偶数段は奥に)曲げて,らせん状にコイルを形成する(図3(b)).そして,図3(c)のようにコイルの変形防止のため,らせん状のコイルエレメントを樹脂で固める(インサート成形).更に,メアンダ状(ジグザグ状に曲がりくねった線路)のもう一つのアンテナ素子を,コイルの外周と同一面内に配置することによって二つの周波数で共振するようにする.


図3 2周波プレスヘリカルアンテナの製造方法と構造



従来,線材を巻いたヘリカルアンテナは寸法精度を維持することが難しく,共振周波数のばらつきが問題であった.新製法は寸法精度が高く,共振周波数のばらつきを低く抑えることができる.また,従来はコイルの変形を防ぐために,弾性のあるりん青銅などの線材を使っていた.この材料は多くの場合,導電率が低く損失が大きくなる.しかし,新製法は銅などの導電率の高い材料が使え,放射効率の向上が図られている.もう一つの大きな特徴はインピーダンス整合に整合回路を必要としないことである.

図4に2周波プレスヘリカルアンテナのインピーダンス特性を示す.図はGSM+DCS対応の例である.図の矢印部分はそれぞれ所望周波数帯域を表しており,それぞれの帯域で電圧定在波比(VSWR)2以下の望ましい整合状態を実現している.


図4 プレスヘリカルアンテナのインピーダンス特性




2/6


| TOP | Menu |

(C) Copyright 2000 IEICE.All rights reserved.