4.2 三次元MEMS光スイッチ

 Lucent Technologies社は,三次元MEMS光スイッチを用いた光クロスコネクト装置(Lambda Router)を発表した(17).このスイッチは256×256チャネルで,現在フィールド試験中である.挿入損3〜7dB,漏話−50dB以下,スイッチング時間1msの性能を持つ.装置の写真を見ると大型のラック3台で構成されており,MEMS光スイッチ部分以外の,ファイバ実装,制御系,駆動系などが大きな部分を占めていることが伺える.

 三次元MEMS光スイッチを作る場合,第1の課題はミラー角度の制御である.ミラーの角度を決めるには,@あらかじめ校正した電圧を与える開ループ制御,Aミラーの傾きを検出するセンサを付加し,ミラー角度を定める閉ループ制御,B出力側ファイバの光量を最大に保つ閉ループ制御の3通りが考えられる.Toshiyoshi(18)らは,多結晶シリコン薄膜で作ったジンバル構造からなる2自由度マイクロミラーについて,ミラーの下方に配置した四つの静電駆動電極を用いて,2自由度光ビーム走査を行ったときの制御性を調べた.駆動電圧の与え方を工夫し,あらかじめ偏向角と電圧の関係を校正した場合,碁盤の目状に走査したときの誤差はフルスケールの0.33%であった.すなわち開ループでも,この程度に正確な偏向が可能である.ただし,熱ドリフト等の影響は避けられない.

 ミラーの支持ばりにひずみゲージを作り込むとか,ミラーと駆動電極間の静電容量を測ることによって,ミラー角度を検出できる.この値に基づいて,ミラー角度を正確に閉ループ制御することが可能である.この場合,チップ上にミラーとセンサを集積化できるため,局所的な配線だけで閉ループ制御系が作れる利点がある.しかし,ファイバやマイクロレンズと,ミラーアレーの位置が相対的に動く場合(例えば熱膨張量の差によるドリフト)は,制御不可能である.

 出力光を用いる閉ループ制御は一番望ましい系である.この場合は,出力光を分岐して検出するために生ずる余分の光損失,大規模な閉ループ制御系の必要,常に最大値を保つための制御アルゴリズムなどが課題である.

 また制御系とは別の技術課題として,ミラーの平たん度の確保と,駆動電圧の低減が挙げられる.Sawadaら(19)は図4に示すように,10μm厚の単結晶シリコンをマイクロ加工して,直径500μmの2自由度ミラーを作った.全面で80nm以内の平たん性を得た.また,駆動電極も階段状ピラミッドのように徐々に細くなる段々を付けて作り,頂上の針状にとがった部分で可動ミラー中心を支える構造とした.駆動電圧70Vで,6度の傾きを得た.従来の駆動電圧は100Vを超えていたので,これは低い値である.

 




図4 単結晶シリコンから作った2自由度マイクロ可動ミラー
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