JABEEに認定申請するためにはどうしたらよいのか
 ――学部における技術者教育システムの改善と発展のために――
Secrets for the Accreditation and Examination of Engineering Education Programs by the JABEE

認定企画実施委員会幹事 牧野光則 
認定企画実施委員会副委員長 篠田庄司 



■1. は じ め に

 日本技術者教育認定機構,通称JABEE (Japan Accreditation Board for Engineering Educationの略で,ジャビーと呼ぶ)が発足してから3年が経過した.その機構は,

 「高等教育機関(大学,並びに2年制の専攻科を設けている工業・技術系高等専門学校及び短期大学)の学部教育における(研究者を含む広い意味での)技術者の基礎教育を行っている教育プログラム(学科,コース,専修等のカリキュラムだけでなく,プログラムの修了資格の評価・判定を含めた入学から卒業までのすべての教育プロセスと教育環境を含むものであり,学科やコースなどの総称)が社会の要求水準を満たしているかどうかを,主要工学系学協会の協力を得て,統一的な認定基準に基づいて確実,公平かつ公正に審査し,要求水準を満たしている教育プログラムを認定し,そのプログラムの修了生がそこで定めた学習・教育目標の達成者であることを社会に知らせることをもって,そのプログラムでの技術者教育の質を社会に保証する民間の認定機関」

である.審査・認定は高等教育機関が作成した自己点検書の審査と実地審査によって行われるが,認定基準に対する高等教育機関が提示する証明の妥当性が中心である.これまで,数々の認定審査試行や研修会などを通して準備が進められ,2002年4月には初の認定プログラムが公表された.そして,2002年度からは各分野にて本格的に審査が行われている.当初はJABEEが認定を通じて大学をランク付けするのではないか,というような誤解から教育関係者はJABEEに関して極めて敏感であった.加えて,JABEE自体で基準や審査方法が毎年修正されている.このために,古い情報に振り回され,建設的な議論・検討ができない恐れがある.

 電子情報通信学会(以下,本学会という)ではJABEEの設立準備段階から活動に参加し,JABEEの正会員かつ幹事学協会として責任を負い,二つの分野(電気・電子・情報通信及びその関連分野,情報及び情報関連分野)の審査を関係学会と共同で担当している.このため,本学会会員に対して正確な情報を伝えることを目的に,本誌2001年1月号にて「大学における技術者教育と改革の方向」を掲載した.ここに書かれているJABEEの基本理念等には変化がないものの,基準や審査方法の変更・具体化に伴い再度本誌にて情報を提供する時期がきていると判断した.ただし,JABEE認定審査の原則は「教育プログラム自身による改善努力の促進である」ので,本稿の題名を「JABEEの認定を得るためにはどうしたらよいのか」とはせず(できず),表題のようにした.

 本稿は,JABEEへの認定申請のために準備を進めようとする高等教育機関の関係者を主な読者対象として,それらの方々が,既に,JABEEの「日本技術者認定基準(単に,認定基準という)」と「認定・審査の手順と方法」(JABEEのホームページ(www.jabee.org)からダウンロード可能)を少なくとも一度以上読まれていることを前提にJABEE認定申請についてより深い理解が得られることを念頭に執筆した.また,企業関係者にとっても,そのような高等教育機関での学部相当の技術者教育システムの品質保証は決して無縁ではなく,我が国の技術士,米国のPE(Professional Engineerの略)やAPEC(Asia Pacific Economic Cooperationの略)のAPECエンジニアなどの技術者資格や技術者継続教育と両輪を成していることを,本稿を通じてより理解を深めて頂ければ,と願っている.

 なお,本稿はJABEEが定めた2002年度の認定基準,審査方法に加えて,執筆時(2002年10月初旬)までに得られた公開可能な2003年度以降の方針・情報を基に書かれている.しかしながら,本稿が掲載される2002年12月時点では更に詳細な情報が公開されていることは確実である.更に,JABEEの文書は毎年改訂されているので,昨年度までの情報が無効となる場合もある.そのため,JABEEのホームページあるいは本会のJABEE関連ホームページ(www.ieice.org/jpn/jabee/)で,常時,動向を確認頂きたい.

■2. JABEE認定は資格ではない――個人の能力保証ではなく教育システムの品質保証――

 JABEEは,大学学部相当の技術者教育システムを審査し,認定する民間機関である.米国での対応する機関であるABET(Accreditation Board for Engineering and Technologyの略.www.abet.org)も民間機関である.JABEEが認定したプログラムを修了した学生は「JABEE認定技術者」とでもいうような技術者資格を得る,というのは誤解である.(卒業時に「指定された科目群の単位修得によって与えられる資格」である教育職員(教職)免許のような資格を得るわけではない.)JABEEは個々の学生を評価・認定するのではなく,あくまでもプログラムそのものを認定する.認定されたプログラムの修了者全員はそのプログラムが公表している学習・教育目標に述べられていることを満たしているはずだ,という考え方である.

 JABEEが認定したプログラムの修了生は,技術士資格一次試験が免除され,修習技術者(後述の15.2を参照)となることができるが,今後,修了生をどのように評価し,扱うかは企業などの社会であり,JABEEとは直接関係ない.ただし,認定プログラム並びにプログラム修了者を高く評価されるよう,JABEEはもちろんのこと高等教育機関側の努力が求められる.


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