■4. 知的社会基盤工学技術の研究開発 こうした背景と時代変化の中で,世界に住む多くの人々が安心して暮らせる社会の基盤を作ることが技術の基本的・本格的ニーズであることに変りはない.問題は,新しい社会を見越した社会基盤構築・運用・発展のための新しい技術体系が作れるかどうかということである. ここで新しい社会を見越した社会基盤とは,人間・社会と自然・人工物のダイナミックな共生のための基盤(インフラストラクチャ)のことであり,現状の技術の言葉でいえば,建築,機械,その他物理的,力学的なシステムを扱う分野と情報,通信,健康,生命,その他人間や社会の意味を担うシステムの融合システムであると考えることができる.こうした融合システムのデザイン,運用,発展を行うための技術が,知的社会基盤工学技術と呼ばれる技術であり,端的にいえば,人間が安心して安全に暮らせる社会の基盤をデザインし,維持し,発展させるための技術であるといってもよい. 社会基盤は人間の生活全般を支える複雑なシステムであるから,そのための技術としてもまたシステム技術が必要である.特に,機械,建築,エネルギー,ライフライン,輸送,機器,生活用システム等にかかわるインフラ技術,情報通信ネットワークにかかわる通信技術,情報技術,更に健康,生命,表現,アート等,生命・人間科学や芸術の基本的問題が新たな形をとって,このシステム技術の体系に密接に関係してくる. 知的社会基盤工学技術の研究開発項目のうち,ITに関連する項目として1998年当時の報告書に挙げられた項目には,例えば下記のようなものがあった.参考のために幾つかの項目を羅列しておくが,それらの中では既に研究開発が進みつつあるものも多い.例えば,「超分散センサ・コンピュータ・ネットワークシステム」は現在「ユビキタスコンピューティング」という言葉でいわれている技術の発展形である.また,「超高速ネットワーク・データバス技術」については,慶應義塾も関与している「ギガハウスタウンプロジェクト」が,既に広域でのギガビット級超高精細動画像実用伝送を実現している.また,慶應義塾は本年7月から湘南藤沢・矢上キャンパス間で40Gbit/sの超高速回線の運用を開始する予定である.
なお,ほかにも,例えば「リアルタイムワイヤレス通信技術」のように,その後課題として浮上してきたテーマもある. |
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