電子情報通信学会誌

Vol.86 No.12 pp.955-958
2003年12月

高杉耕一 正員 日本電信電話株式会社NTT未来ねっと研究所
           E-mail takasugi@ma.onlab.ntt.co.jp
中村元紀 久保田 稔 正員 日本電信電話株式会社NTT未来ねっと研究所
小柳恵一 正員 早稲田大学大学院情報生産システム研究科

Service Continuity Adapting to Ubiquitous Service Environment. By Koichi TAKASUGI, Motonori NAKAMURA, Minoru KUBOTA, Members (NTT Network Innovation Laboratories, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION, Musashino-shi, 180-8585 Japan), and Keiichi KOYANAGI, Member (Graduate School of Information, Production and System, Waseda University, Kitakyushu-shi, 808-0135 Japan).


ユビキタスサービス環境に適応するサービス連続技術 高杉 耕一 中村 元紀 久保田 稔 小柳 恵一


Abstract 今後進展するユビキタスサービス環境では,移動端末を含む多様で大量のノードが遍在する.無線を含むネットワーク状況の変化により,これらのノードはネットワークから切断される可能性が高い.また,ユーザもこれらのノードを状況により使い分け,最良のサービスを要求する.そこで,このような環境下でも,サービスを中断することなく継続させるサービス連続技術が求められている.本稿では従来から研究されてきたIPで端末のモビリティを解決する技術と現在注目されているアプリケーションレベルのサービス連続技術について述べるとともにP2Pアーキテクチャとの連携について考察する.
キーワード:モビリティ,P2P,ユビキタスネットワーク,サービスの移動性


■1. は じ め に

 ユビキタスサービス環境では至るところに端末が存在し,それらが動的にネットワークを構築していくことが,期待されている.動的なネットワークは端末やネットワークの自由度を高めることができる反面,静的なネットワークを利用した従来の技術をそのまま適用することは困難である.

 そこで,IPで端末のモビリティを解決するモバイルIPや無線の端末間でネットワークを構成するアドホックネットワークの研究が盛んに行われている.これらの技術では動的なネットワーク上で端末のネットワークへの接続性を確保することができ,エンド端末のネットワークアドレスの変化(図1@端末の移動)やネットワークのトポロジーの変化に影響されることなく,サービスの連続的な提供,享受が可能となる.

 他方,近年,単に端末のネットワークへの接続性だけでなく,ユーザが端末を状況に応じて自由に変更し,その際にもサービスを連続的に提供,享受したい(図1Aサービスの移動)という要求が顕在化している.そこで,これを解決するため,アプリケーション層でオーバレイネットワークを構築し,サービスを連続させる技術が注目されている.また,同様にアプリケーションレベルで構築されているP2P(用語)の技術とサービス連続技術が連携することで,その応用範囲は更に広がる.本稿ではこれらの技術について解説する.

図1 移動の種類

図1 移動の種類
ユビキタスで動的なネットワークでは端末の移動とサービスの移動の両方をサポートする必要がある.


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