■2. UWB無線技術の要点

 UWB信号は,比帯域幅=(帯域幅)/(中心周波数) が20%以上,または,帯域幅が500MHz以上の信号と定義されている.UWB方式は,二つに大別される.

 一つは,搬送波による変調を用いた直接拡散(DS:Direct Sequence)や周波数ホッピング(FH:Frequency Hopping)などのSS方式,OFDMなどのマルチキャリヤ方式,及びそれらの組合せにより,超広帯域無線伝送を実現する方式である.これらは既存技術によるUWB無線伝送の早期実現などの視点からマイクロ波帯における無線PANへの応用が検討されている.

 もう一つは,従来から知られる狭義のUWB無線であるインパルス無線(Impulse Radio)方式である.搬送波による変調を用いず,1ns以下の数百ps程度の非常に短いインパルス状のパルス信号列を無線で送受信する.

 2.1 UWB無線技術とは

 図1にImpulse RadioによるUWB信号波形を,通常の二相位相変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)信号波形と比較して示す.図に示すように,UWB方式ではコサイン波のような搬送波による変調をせずに1ns以下のパルスを複数送信する.そのため,占有帯域幅は非常に広くなり,スペクトル電力密度は非常に小さくなるため,通常のスペクトル拡散通信方式と同様に秘話性・秘匿性に優れ,他の狭帯域通信に与える影響は小さいなどの特長を持つ通信方式である.超広帯域に拡散されるのでその特長が更に強調される.

 

図1 Impulse RadioによるUWB信号と搬送波を用いた位相変調信号の比較

(a) Impulse RadioによるUWB時間信号波形

 

図1 Impulse RadioによるUWB信号と搬送波を用いた位相変調信号の比較
(b) 二相位相変調(BPSK)による時間信号波形

図1 Impulse RadioによるUWB信号と搬送波を用いた位相変調信号の比較


 図2に例示するように,UWB信号はBPSKなどの被変調信号はもとより, 通常のスペクトル拡散信号(2.4GHz帯ワイヤレスLANで数十MHzの帯域幅)に比べても超広帯域(数GHzの帯域幅)であることからUWBと呼ばれ,電力スペクトル密度もスペクトル拡散信号(2.4GHz帯のワイヤレスLANで10ミリワット:10mW/MHz以下)に対して,UWB信号(IMHz当り10nW:10nW/MHz以下)ははるかに低く,他のシステムが共存しても干渉を与えにくいばかりでなく,他のシステムからの干渉にも耐えられ,スペクトル拡散信号の特長を強調した利点があるといえる.



図2 従来の方式と比べたUWB方式の帯域幅

図2 従来の方式と比べたUWB方式の帯域幅


 更に,パルスの時間幅が非常に小さいため,マルチパスを細かく分解でき,RAKE受信が可能となるので,マルチパスにも強い方式である.また,UWBでは1ns以下のパルス(モノサイクル)からなるベースバンド信号を複数用意する.そのモノサイクルをユーザごとに固有のタイムホッピング(TH)系列分だけシフトさせて送信する.そのため,多元接続する際,他局のモノサイクルが衝突(ヒット)したときに誤りとなり,このヒットする確率が誤り率などのシステム性能を左右する要素となる.


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