■3. 地上ディジタル放送の送受信 地上ディジタル放送においては,映像・音声・データから構成される番組を受信機が正しく表示できるよう,映像・音声・データを符号化する情報源符号化,及びそれらを束ねる多重化には国際標準規格になっているMPEG-2(3)を採用している(図4).多重化された情報を電波に乗せる形式に変換する伝送路符号化では,固定受信や移動受信など伝送パラメータが異なるサービスを含む場合,それぞれのセグメント群に所要のマッピングを施し,IFFT(Inverse
Fast Fourier Transform)により一挙に1チャネル分のOFDM波を得ることが可能である.異なる伝送パラメータは,最大で三つまで持つことができる.また,TMCC(Transmission
and Multiplexing Configuration Control)と呼ばれる伝送制御信号を多重し,どのようなパラメータの信号が受信されているかを受信機に知らせることにより,復調及び復号を補助する.
広帯域ISDB-Tの伝送帯域幅は,現行のアナログテレビ放送の空きチャネルを使用するため,1放送局当り約5.6MHzである.市販されているアナログ受信機の中に,上側の周波数に隣接したディジタル放送からの妨害に弱い機種があることを考慮し,ディジタル送信信号の中心周波数を周波数の高い方へ1/7MHz(約142.9kHz)シフトし,ディジタル放送から見て下側の周波数に隣接するアナログ放送への干渉妨害を軽減している.更に,隣接するアナログ放送への妨害が検知されないようディジタル放送のスペクトルマスクを規定している(図5).
地上ディジタル放送は,テレビジョン受信の大半を占めると考えられる屋上アンテナを用いる固定受信,ロッドアンテナを備えたテレビや小型ラジオによる携帯受信,カーテレビやカーラジオに代表される移動受信など様々な受信形態を対象としている.固定受信では,気象の変化や航空機による反射妨害があるものの,伝送条件はほぼ安定している.一方,移動受信では,建物からの複雑な反射が移動速度によって刻々変化するマルチパスフェージングの妨害が支配的な受信環境となる.このような受信環境に対処するため,受信機では,様々な伝送パラメータで送信されてきたディジタル放送信号を受信形態に応じて選択できる仕組みになっている. |
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