The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


学会活動電子化の意義

副会長 寺田浩詔

 電子情報通信学会の枠組みは、ソサイエティ制の試行開始など、大きな転換を始めた。この試みの成功には絶え間ない活動様式の改善が求められている。初心忘れるべからずであろう。  なかでも、定期刊行物の電子化投稿に始まる。電子的手段の導入は、今後の学会の在り方に基本的な影響を与える、大きな意義を持つであろう。既に、論文出版経費・期間の大幅な削減とその一部の投稿者への還元が実現された。試行に努力された編集理事、編集委員ならびに事務局関係者のご努力に厚く感謝したい。

 今後、会員名簿のCD-ROM化などを含め、出版物領布の電子化に進展するのにそれほどの時間は要しないであろう。出版関係の電子化による経費節減は、定期的にも把握できるので、容易に認められる最初の成果になることが期待される。

 しかし、電子化の影響は更に、学会活動の本質的な部分におよび、学会の在り方自体が問われる形で現れよう。先日の、本学会のさる会合での、尾佐竹名誉員の御意見は誠に当を得た御指摘であった。

  電子化の意義は、印刷では不可能な、情報の表現と領布の実現にあり、これは学会の情報提供形態に大きな変革を迫るであろう。

 第1の変化は、名簿のCD-ROM化を想定すれば直ちに理解できる。すなわち、情報表現がより多様化しかつ量的制限を受け難くなるので、必ずしも情報のおくり手側が規定した表現ではなく、受手側が、電子的に、自由に得たい情報を取り出せる状況になる。例えば、印刷のグラフでは、疑似的に3次元化されたデータが、特定のパラメータ群について、表現されるに過ぎないが、そのデータ構造とパラメータ群とを与えておけば、受手側が自由に表現形式を選択して結果を吟味できるといったことが期待される。

 第2の変化は、刊行と購読の流動化に現れる。印刷物の刊行が日、週、旬、月、季、更には年などに量子化され、情報の密度に応じて、特集号などを企画するのは、印刷固有の領布手段に制約された事象である。しかし、電子的領布では、情報を受け取る周期や特集号の主題を決める主体は、情報解釈の例と同じく、受手側に移行できる。

 情報の電子的収集と領布によって、個別の会員に最大の満足を与えるには、現行の著作権法の問題を始め、会員全員が電子的な情報受領手段の所持を要求されるなど、さまざまな問題が解決されねばならない。しかし、我が国の学・協会は、情報発信源として世界的な寄与を果たす上で、これらの問題の解決を実践的に主導することが求められているのではなかろうか?


IEICEホームページ
E-mail: webmaster@ieice.org