The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


「電気通信学会」入会から30年

九州支部長 追江 博昭

 1967 年の入会だが,その1年前から「電気通信学会雑誌」を購入していた ので,満 30 年の会員に相当すると自負している.学会 80 年の歴史からみる と,ほんの若造だが,本当にすごい 30 年を会員として過ごしたものである. 学会名からして,入会の年に「電気通信学会」から「電子通信学会」に改称さ れ,その 20 年後の 1987 年には「電子情報通信学会」となった.名称変更が あった学会は希有なのに,2 度の誇るべき改称である.

 最初の「電気」→「電子」は当然と感じた.電子工学専攻学生の幼稚な感想 であった.振り返ってみると,通信の心臓部である交換機は,電気が流れる機 械の固まりともいえるクロスバ型が製造の最盛期にあった.研究開発のフェー ズは終り,残されている技術課題は製造技術と検査技術の改良だけ(1968 年, NEC での工場実習現場の技術者談)という時代であった.1972 年からは電子 交換機 D-10 の導入が始まっている.「電気通信」はクロスバ交換機で終ったっ たといえる.改称は正に当を得ていたのだ.

 2 度目の改称で「情報」が加わったのには少し抵抗を感じた.名前が長くなっ たことが嫌で,それも単に担当分野名の羅列というのに芸のなさを感じた.そ の後約 10 年,今では「電子情報通信」以外に本学会に適当な名称はないと感 じるようになっている.とにかくこの名は体を表している.電子技術を基礎と して,計算機と通信を融合した技術分野を表す用語はほかに見当たらない.75 年史によると,この新名称は 1984 年に理事会預かりとなり,1987 年に至っ て正式決定をみている.上のような議論は当然尽くされたはずである.面倒な 改称を枝葉末節の議論を排して決行された関係者に敬意を感じている.

 外野席に座っていた者が,おこがましくも学会の名称を論じたのは次のこと がいいたかったからである.この学会とその会員は,この 30 年間に,2 度の 改称をせざるを得ないほど,すごいことを成し遂げたということである.身近 な電話や TV の発達,新たに身近に登場した PC やそのネットワーク,列挙し きれない.スーパコンピュータや高性能ワークステーションを世に送り出すと 共に,それらを自分達の武器として,自己増殖型に技術開発の質を高め,量を 拡大し,新分野を開拓してきているというのもほかに例がないことであろう. 願わくば,更なる技術革新を達成し,電子・情報・通信に新たなキーワードを 追加するような発展的改称を迫ってほしいものである.


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