皆が協力し,広く知識を世界に求めて成果を上げる群の創造には,日本は, 特に産業は素晴らしい実績を上げてきた.しかし,不確定性の高い,非常識と も思われる個の独創を育てることには,残念ながら社会環境にもリーダーにも 恵まれてこなかった.日本人は独創性に乏しいといわれるが,そんなことはな い.世界に誇れる独創的成果も少なからず生まれてきたし,現在多くの独創的 な若者が活躍の場を求めて悩んでいる.研究費が増えれば独創的研究が増える わけではない.独創的成果を高く評価する環境とリーダーの役割が重要である.
その環境を形成するインフラの重要なものとして,学会があり研究会があり 論文誌,学会誌がある.日本の研究者は概して,面子にこだわり独創的成果を 大胆に発表することを躊躇する傾向があるのではないか.そのために,過去に プライオリティを欧米の学者に奪われたケースが多々ある.日本語のハンディ キャップもあった.しかし現在は,国際的な発表の機会が増えて,優秀な論文 が著名な外国の論文誌に流れて編集者は苦慮している.
当学会の論文誌を,世界の研究者が注目するような独創的な研究成果が多く 掲載され,世界的に広く購読される論文誌に育てたいものである.和文誌がそ うなるには永い年月がかかるであろう.しかし英文誌は,内容さえ充実されれ ば,短い期間で着目誌になることは可能であろう.独創的な成果を速報で,ど の論文誌よりも早く出版するのも一つの選択であると思う.速報でプライオリ ティを確保してから,ゆっくりと後世に残るしっかりとした本論文を発表すれ ばよい.他誌より早く出版するには,査読委員の協力が必要である.個の独創 にはリスクは付き物である.独創性を認めたら,大胆に発表させる勇気が必要 である.会員の意見をお待ちしている.