The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


ボランティア活動

総務理事 木村達也

電通会誌8月号

 1995 年1月に起きた都市直下型・震度7の阪神・淡路大震災の救援活動を 契機として,ボランティア活動の重要性がクローズアップされた.多くのボラ ンティアの自発的かつ献身的活動が,国や地方自治体の対応の遅れやライフラ イン復旧の遅れを補う役割を果たし,精神的支援の意味合いも含めて多数の被 災者の救済に顕著な役割を果たした.「公徳心」という古い言葉とは一見無関 係と思われていた若いジェネレーションの人達が,ボランティア活動に喜びを 感じ,その中に生き甲斐を見いだすケースさえも生まれている.その後に起き た大規模な重油流出事故の処理についても,その精神が引き継がれていること が報道されており喜ばしく感じたのは私だけではなかろう.

 このようなことを思い出したのにはいささか理由がある.実は,今年の新入 社員に入社後の仕事の希望を聞いたところ,大学で学んだ専門テーマとは異な り,ボランティア活動の経験に根差した問題意識に基づいた研究分野を希望し, それがかなえられたという答えが数名の新入社員から返ってきた.これを聞い て彼らのトライアルの成功を願うと共に,先に述べたボランティア活動の精神 が定着しつつあることを身近な事象として新鮮に感じた次第である.

 学会活動は経済的には会員が拠出する会費により運営されるものであるが, 本部,支部,ソサイエティ活動のかなりの部分を会員のボランティア活動に依 存している.多くの方々に献身的に頭脳と労力を提供して頂き,本部・ソサイ エティ等の企画,種々の研究集会の運営,会誌・論文誌等の編集,等々に関し て全体として高いレベルの活動を維持している.この結果もたらされる学術・ 技術情報の交流の場が会員の研究開発活動をサポートする役割を果たすことに なる.

 歴代会長により提唱されてきた学会の電子化・ネットワーク化は昨年来具体 的な形で実を結びつつある.既に高性能サーバやクライアント端末,LAN の整 備が進み,投稿論文管理システムや会員管理システムが稼働するに至っており, ネットワークを経由した論文投稿・査読システム,論文情報の配送・検索シス テムについても具体的検討を開始したところである.ネットワーク技術を学会 業務に使いこなすにあたっては,これまで会員の中から献身的なサポートを頂 いており,御支援・御努力の一端に報いるべく,献身的活動に対して会長から 感謝状を贈呈する仕組みを作らせて頂いた.ボランティア活動の重要性は電子 化・ネットワーク化だけに限るものではなく,学会活動全体の活性化とは会員 のボランティア活動そのものといっても過言ではない.電子情報通信学会の活 力を維持向上するために,会員の皆様の御協力・御支援をお願いする次第であ る.


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