The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


21世紀に向けた期待

編集理事 佐藤健一

 マルチメディア技術の進展とともに仕事の環境も随分変ってきた.E-mail, WWW の利用により技術情報の流通の早さは驚くほどであり,世界で進展してい ることが即時的に伝達される時代になりつつある.仕事の能率も向上し,場合 によっては情報を処理する側が追いつけないことも度々ある.一方,その使い 勝手についてはまだまだ十分とはいえず,パフォーマンスやコストの面でも多 くの課題があり,情報通信の今後の発展においては多くの革新が必要である. このことは,電子情報通信技術の研究者/技術者の力の出しがいがある広大な 領域があるということであり,我々の果たすべき役割は今後とも大きい.

 情報流通の促進により,能率の点だけではなく仕事の進め方,活動の範囲も 変化した.かつての縦型の比較的狭いコミュニティから,水平方向の世界的な 広がりを持つ活動が増加した.研究者間の交流も距離の壁が緩和され世界的な ものとして効率的に進められるようになった.例えば各種の国際ワークショッ プを企画・運営する場合でも,各国委員の幅広い意見を反映しながらも効率的 にかつ迅速に進められるようになってきた.

 このような情報化やボーダレス化の進展を電子情報通信学会は牽引していく 立場にあるが,それをより効率的に進めていくための,学会自体におけるいろ いろな施策も進展している.5 年程前からのソサイエティ制への移行、学会の 各種業務や論文査読システムの電子化,論文誌のウエッブでの公開に向けた検 討等の会員サービス向上のための様々な活動はその一例である.会誌もやがて はソサイエティ誌相当のものに移行することが必要になるであろうし,国際化 を進める上では,何らかの英文マガジンの実現性が検討されるのもそう遠い将 来ではないと思われる.一方,これらの学会の仕事のかなりの部分は多くの方々 のボランティアに支えられているが,今後の学会の発展のためになすべきこと は多く,できるだけ多くの方の英知を集めることが必要である.学会は全体で 見るとその規模は大きく,研究発表以外の活動に対しては,個々の会員の方々 の参加意識もなかなか得にくい面があるのも事実であろう.今後の学会の発展 において,会員の活動を活性化するソサイエティ活動の拡大がキーとなる.

 戦後一貫して発展してきた我が国の経済を支えてきた日本独自のやり方も転 機を向かえつつある.発想の転換を図ってこの変革を成し遂げてこそ 21 世紀 の発展が見える.このためには国としての施策も必要であり,関連6学会での 情報化社会の発展に向けた提言(会誌 1998 年6月)もなされた.個人的には, 現在景気浮揚策の一貫として進められている各種通信基盤整備などは,今後補 正予算の位置付けではなく,継続的な国のプロジェクトとして発展させていく 必要性を感じている.21 世紀に向けてこれらが進展し,研究や技術開発,学 会への貢献に,より大きなインセンティブと楽しさが得られる社会となること を期待しているところである.


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