The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


学会のグローバル化,国際化を考える

企画・調査理事 後藤 敏

 8 年前に編集理事として英文論文誌の改革に携わった.このとき,瀕死の状 態にあった英文論文誌を活性化させるためには,ソサイエティごとに分冊化し て発行し,各ソサイエティで独自の編集ができる形態にした本格的な英文誌に すれば,生き返るのではという目論見であった.

この数年間で英文論文誌の掲載論文数は和文論文誌にほぼ近い数までに増加し, 当初の予想は見事に当った.編集に携わられた方々の熱意と地道な努力が実を 結んだわけで深く感謝せずにはおられない.当時,英文論文誌に力を入れた理 由は,英語で論文を書き日本から情報発信することで,個人の研究業績をより 正しく世界で評価してもらえ,日本への理解も深まるであろうという期待と, IEEE をはじめとする海外の論文誌は掲載までに時間がかかるため,投稿から 出版までを早く発行できる日本からの質の高い英文論文誌を作るということで あった.

 8 年間経過した今では,インターネットの普及で世界の最新の膨大な量の学 術情報が確実に迅速に入手でき,電子的手段で大量の情報をだれとでも素早く 交換できる時代となった.ビジネスの世界でもオープン化,グローバル化が促 進され,世界レベルで高い競争力を持つ製品は国境の垣根なしに,世界各国で 利用されている.このようなグローバル環境の進展の中で,本学会はどうある べきであろうか.

 まず第1には会員諸氏が英語で論文をできるだけ書くことの習慣をつけるこ と,第2に本学会の世界での認知度を高める施策を打つこと,第3に IEEE 等 の海外学会との運営の連携を強化することを考えたい.本学会の英文論文誌の 海外での頒布数が極めて少なく,海外の研究者からは電子情報通信分野で日本 から英文誌が出ていることを知らないと聞くことが多い.また,本学会員でも 英文で投稿するならば IEEE 誌にまず投稿するという者も多い.海外での頒布 数が現在の1けた以上に高まれば,海外からの投稿を含めて論文誌への注目度 が増すだろう.注目度向上のための種々のプロモーション活動を行うことが大 切で,一つの方策として,インターネット上での論文頒布の仕組みも早急に考 えるべきではなかろうか.海外学会との連携は会議の共同主催という形で広く 行われているが,海外で開かれる国際会議の共催を多く企画していくことや, 会誌記事や論文誌の共同発行の実行で,本学会の論文が世界の多くの読者に目 に触れる機会を増やすことが大切である.

 科学技術はもともと普遍的なもので,新しい発見や発明は世界で初めてであ ることに意味があり,日本国内で初めてということは業績の対象にはならない. 本学会から国際という言葉自身がなくなることが学会として国際化した証しに なるであろう.世界のどこにいても研究開発活動は同じにできるというグロー バルな環境ができるよう,更なる努力を皆様と一緒に続けたい.


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