The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


変化への対応・学会の対応

副会長 下村尚久

変 革

インターネットを中心とする新しい技術の波が大きく世界を変えつつある.

まさに本学会の領域である情報通信技術が原点となり,情報通信・放送が革新されていくだけでなく,製造業にとっては調達や製品の市場が急速にグローバル化しており,企業運営のあり方,e-コマースと称せられる新しい商売の形態,行政,国家までもが変化している.

企業,経済,社会,国家の構造,仕組みの変革である.

現状に皆の知恵が加わり,また新しい発展が起る.このスピードはものすごく早い.

米国が一歩先を行っているが,ワクワクするような楽しい時代である.

身近な企業の研究開発,学会の活動の特徴的な点に触れてみたい.



企業の研究開発

精緻に組み立てられた生産技術をベースに日本の製造業の力が米国を凌駕していると見られた時期もあったが,これをじっくり研究した米国が新しい情報通信技術を駆使して圧倒してきており,特にソフトウェア分野で優位に立ってきていることは広く認められている.

米国では軍用技術の転用が有効に進められてきた事実があるが,現在は研究開発の市場の形成が注目される.すなわち新しい技術の着想を持った技術者が市場の資金を得て,ベンチャー企業を起こし,開発を進めている.これを自ら事業化することもあるが,一定の成果が得られると既成企業がこれを買収し取り込んでいく.この仕組みが社会システムとして定着しており,研究開発の自由市場を形成している.

日本の製造業では技術開発を社外との連携で効率的に進める指向を強めているが,社内研究資源への依存度が極めて大きい.

企業経営の立場からは,研究の自由市場が活用できる度合いが広まれば,資源の効率的活用が可能になる.

日本でもこのような自由市場を発達させる必要があり,我々もこれをできる限り支援していきたい.



学会の活動

電子情報通信学会は1995年にソサイエティ制度に移行した.分権化して,迅速な判断をできるようにしたもので,現在多くの企業がカンパニー制度を導入しているが,これを先取りしたものといえよう.

学会の運営にはIT技術が駆使されている.また英文誌の発行,海外会員の増強策,アジアの学会との友好契約の締結など国際化に力を入れてきた.

しかしこの市場がグローバル化していく中で海外の学会と対比してみると問題点が浮び上がってくる.IEEEはグローバル市場をねらい,海外会員を積極的に増やしている.電子情報通信学会とIEEEの関係は日本の学会と米国の学会から日本の学会と世界の学会へと変貌しつつある.

電子情報通信学会は日本の学会として伸びるのか,アジアにも拠点を持つアジアの学会を目指すのか,小なりといえども世界の学会を目指すのか将来の姿を描くべき時期にきている.

IEEEは1960年代に既に分野別学会を統合している.ここと友好的に連携していくためにも日本国内の分野別の各学会を統合する道は避けて通れない.

学会もまた変革の波にさらされている.


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