The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


北海道経済と学会

北海道支部長 白髭博司

 1990年ごろのバブル景気後の不況は,民間設備投資額も3年ぶりに増加傾向に転じるなど,今年度に入って全国的には回復の兆しが見え始めている.しかし残念ながら北海道は,行政や地元経済界の懸命の取組みにもかかわらず,道内の倒産件数が平成11年度第3四半期から3期連続で前年同期比で増加するなど,景気の回復が立ち遅れている.

 1997年の北海道拓殖銀行の経営破綻は,全道的に大きな影響を及ぼし,景気立ち遅れの大きな原因の一つとなっている.更に,今年に入ってからの有珠山噴火は,来道客数の低下を招き北海道産業の大きな地位を占める観光業に少なからず影響を及ぼしている.

 こうした中,北海道開発庁長官の私設懇談会である北海道活性化懇談会では,北海道の活性化に必要な施策として,有珠山対策,観光,産業振興の三つを取り上げ,特に産業振興に向けては産業クラスター運動の必要性をうたっている.また21世紀に向けた社会資本整備の一つにIT革命に対応した社会資本の高度化の必要性を取り上げている.

 これらの方策は,私も賛成である.ITの推進に必要なインターネット等のネットワークは,北海道が今まで不利と考えられてきた地理的制約を解消する価値の高い社会基盤となるであろう.また産業クラスターを形成するために必要な研究開発は,地理的制約を全く受けない無形の財産を形成する.ITは北海道の優れた特色を大いに活用でき,これを国内外にアピールできる最も良いツールとなるであろう.

 幸い北海道はその歴史が語るように,フロンティアスピリットを持つ人間が日本全国から集結した土地である.業種を問わず様々な企業が商品のフィールドテストを行う場所としてしばしば利用されており,先端的な商品,事業に関心の高い土地柄でもある.またISDNの普及率が全国1位であることでも証明できるように,社会基盤を形成する際に必要な北海道民のITに対する関心は大変高い.

 更に,既にITを機軸とするベンチャー企業も札幌を中心に芽生えてきていることも確かである.1970年代に,北海道大学にベンチャー企業を生む先駆者達の研究会が発足し,80年代には多くの企業が設立,現在では大手ゲームメーカーやソフトウェア開発メーカー等が,北海道大学近くの札幌駅北側のサッポロバレーと呼ばれる地域に集結している.

 学会支部は,北海道全体の動きをとらえつつ,一見地味ではあるが地に脚をつけた活動をする必要があると考える.特に情報通信を受け持つ学会として,ITの産業クラスターが形成される過程で必要な研究者相互,研究者と企業間,更には企業相互の技術情報を交換する場を提供する,いわば縁の下の力持ち的存在として引続き活動することが求められていると考えている.


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