The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


地域での次世代インターネットの取組み

北陸支部長 中野 愼夫

 近年の情報通信技術(IT:Information Technology)の進歩には著しいものがあり,これまでに100年以上続いた電話のネットワークに替り,ここ数年でインターネットが急速に伸びてきている.インターネットの利用者は日本において3,000万人を突破して,数年後には国民のパソコン利用可能人口である8,000万人がインターネットを利用していると予想されている.21世紀に入ってインターネットもADSLやCATVインターネット技術の急速な普及により高速インターネットの時代に入ってきた.また,一部の通信業者によって光ファイバによるFTTHサービスも開始されており,将来に向けた超高速インターネットの兆しも見えてきた.日本政府は「2005年までに3,000万世帯に高速インターネット,1,000万世帯に超高速インターネットの利用の実現」という目標を掲げているが,この目標は加速されそうである.

 現在,我が国における次世代インターネット技術の研究・開発は,通信・放送機構(TAO)によって構築された超高速ネットワークのテストベットであるギガビットネットワーク(JGN:Japan Gigabit Network)により精力的に実験が行われている.北陸地域においても,この実験プロジェクトに大学を中心に積極的に取り組んでおり,次世代インターネットに向けたネットワーク技術や新しいアプリケーションの研究・開発を進めている.具体的には,北陸3県の大学を接続した高臨場感の遠隔教育システムの研究や高品質な映像を伝送する総合ディジタルビデオネットワークシステムの開発,更には映像データベースの遠隔編集システムの研究・開発など,そのほかにも2,3の研究プロジェクトが進められている.これ以外にも金沢市でFTTH実験が行われており,また富山県ではCATV間を相互に接続する光ファイバ網の整備や,とやま情報フリーウェイ推進協議会による県内超高速バックボーンの運営が行われている.昨年はこれらのネットワークを使って,富山国体の映像を全国に配信する実験を行うとともに,今年の5月から6月にかけて北陸3県で企画した実験イベントとして講演会や遠隔教育実験の様子を全国に配信した.

  以上のように次世代に向けたITに関する新しい研究・開発が活発に行われているが,地域においては,研究・開発段階から地域企業の参加は少なく,これらの成果を実用段階へ展開していくことの難しさがある.また概してこれまでの北陸地域の産業構造は機械や部品の製造が主流であり,今後はハードから情報産業などのソフトへの質的転換が求められている状況にある.これにこたえるには,産学のより密接な連携により技術開発を行う必要を痛感する.大学は単なる技術を一方的に提供するだけではなく,応用,実用段階までフォローをすることが必要であり,また企業側からの社会人技術者を積極的に受け入れることにより,より密接な産学人脈を作るとともに,最新技術習得のための人材養成などの役割を十分に発揮することが必要となる.

  本学会が開催する研究会等を北陸地域でも活発に行うとともに,産学技術者の交流の場の提供や若手技術者向け講演会(講習会)など新たな活動にも取り組んでいきたいと考えている.

 


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