新年おめでとうございます.月並みですが本年が良き年であることを祈っています.
昨年は地球規模で大変な年でした.その余韻といって良いのか,悪いのか分かりませんがまだ続きそうな感じです.これとは別に本学会の中心マターのIT関連が世の予想に反して伸び悩み経済的に大問題をもたらしています.このことは種々のことの総合的な結果であるとは考えられますが,本学会としてどのようなことに着目をしてこの解決のために寄与したらよいのでしょうか?日本のITの近い将来を含めた将来におけるあるべき姿等を学会で検討し,社会に問うというようなことも必要かもしれないと思います.
(1) 骨太
小泉総理大臣の構造改革は「骨太」改革という名前が付いて有名である.正に何となくこの日本を良くしてくれるような気がしてならない.
さて,私の本学会の会長としての初仕事は,学会の総会(2000.05.30)の次の31日に Professor Midwinterにお会いすることであった.この方はIEE(The Institution of Electrical Engineers)の会長であった.会員数は14〜15万で,日本でもここの会員が相当数おられるとのことであった.
ウインターさんは講演で“IT”について触れたが,何と“ITの根本のところはEnglandで行ったのだ”と言いました.そのとき挙げた例は,Faraday, Maxwell and Kaoのそれぞれ電磁誘導,変位電流・電磁波,ガラス中の不純物量と光に対する透明性の研究であった.しかし一般には,トランジスタ・集積回路,レーザ,コンピュータ等(これらはアメリカ)がなければ“IT”というわけにはいかないと思う.しかしIEEの会長が堂々とそのように言えるモノがあると(全体でないにしても)いうところはさすが英国と思わざるを得ない.
(2) 骨太の判断はいかに
さて,このように考えたときに,自分,自分のまわり,自分の大学,国研,日本国と視野を広げていくと,各区分でどんなモノが「骨太」研究といえるであろうかと考えたくなる.
電子情報通信学会長が外国に行って,以上のウインターさんのようなことが言えるであろうか?言えるとしたら何であろうか?
このようなことを考えることは一人の人間では視野が狭いので,見落としができるけど,それぞれの分野からしかるべき数の人に集まって考えると,当然人の好みもあり得るが,その条件下で幾つかの結論めいたモノができてためになるのではないであろうか?
私が所属させて頂いた一大学でさえ全望は分かりかねる.その上その中の電子・情報系の中の一学科の全望でも一人では難しい.
「骨太」をどこに焦点を置いて判断するかによってその骨太の太いところが異なってくる.真理オリエンテッドか応用オリエンテッドかによっても判断が異なってくる.
理学と一部の工学が真理,応用を中心として考える工学が応用オリエンテッドになるであろう.
一例として酸化物磁性体フェライトはその理論(理学)を打ち立てた人にノーベル賞が与えられたが,その存在を初めて見つけ応用を考えた人にはその賞は来なかった.
(3) 論文数の増加にいかに対応するか? (一試案)
さて,自分の研究がまとまり,初めて学会に投稿し,それが受理されたときの慶びは35年前のことでも思い出せるほど嬉しいモノであった.各人初めのときはそうであろう.確かに一回一回嬉しいがその絶対値は小さくなるのではないであろうか?
またこれだけ専門分野が小さく分かれてしまうと一体どの程度読まれるのであろうかとも常々考える.
先日電気通信大学で第二回目のフェロー賞授賞式が挙行された.この賞を受けられるぐらいだから,たくさん良い論文を書かれたに違いないが,それらに目を通す方はその分野の専門家に限られるのではないであろうか?
そのような感じを前々から持っていたので,その席で,突然,提案として,フェローになられた方は,自選の代表論文の三個について論文名を出して頂き,それだけでも皆さんに知られ,興味を抱かれた方は読むことができるようにしたらどうかと提案しました.この延長線上にあるのは,一般の論文の場合も,これだけ数が多くなってきた今としては,審査は,全論文で当然するが,論文誌にはそのエッセンスを3ページくらいにまとめてもらい,それらのみを掲載し,全論文は必要な人が各人,学会のホームぺージから入手するようにすべきではないであろうかと考える.
(4) 創造・独創のハイアラキー
このタイトルで,会長就任のときに話をさせて頂き内容は会誌を御覧頂きたい.ここで繰り返すことはしないが,本日(11月25日)午前のテレビで現在の我が日本の不景気をどのように克服するべきかという問題に対して,日本を代表する方が話されたことは,私のハイアラキーでいいますと,5段階ある中で5番目の内容のことを言い出して,“その点が日本人が優れているのでここを頑張ればよいのだ”という内容でした.
非常に残念に思った.ハイアラキーの上位の1,2,3をねらう体制を作りそこで世界を引っ張っていくような国になるように,大学,学会のみでなく,国全体が方向を定めることが肝心だと思っている.