The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


グローカルな学会活動を目指して

エレクトロニクスソサイエティ会長 伊藤弘昌

本学会がソサイエティ制度を導入したのは1995年で,以来この制度の定着化が着実に図られてきた.個々のソサイエティの活発な活動が学会全体の発展を支え,学会全体としての方向性がその一組織体であるソサイエティの活動を大きく決定する.またその活動の展開には,国際化の取組みが現在では不可欠である.米国は,あらゆる側面で世界制覇を目指しており,学会も例外ではない.特にIEEEはグローバル市場をねらい,海外会員も積極的に増やしているが,その活動の幅広さ,公開性,活発さから,認めざるを得ない面も多い.グローバルな活動を行うには,しっかりした基盤を地域に持つことが不可欠であり,根無しでは活躍できない.欧州がまとまってEUとして活動し,米国,EUという巨大な体系の中で,日本だけでの対応などできるわけがない.政治,経済での我が国周辺諸国との連携は,歴史的な問題もあることから大変難しいこともあるが,学術・技術分野では学会が率先して行うことができるのではないか.国内の他の関連学会との連合や統合とともに,極東アジア地区での連携強化を相談し始めるときが今ではないだろうか.

 日本の今後の命運は技術開発とそれに基づくものづくりにある.先端的な大企業が技術開発を活発に進めるとともに,ベンチャーのような高い技術意識を持つ少人数の組織体の身軽な動きを有効に活用しなければならない.我が国産業界が大学などの研究機関を,リスクのない中央研究所としてそれぞれの技術開発に積極的に利用することを真剣に考えてみるときである.大学に産学連携の窓口ができ,専任のスタッフがリエゾンとして対応する体制を整えたところも少なくない.まだ経験は十分ではないが,是非産が利用し,よりよくするための要望も出して頂きたい.

 大きな組織と小さな組織の共存・共栄は,20世紀後半からの大きな世界的課題である.真のグローバルな組織に対抗するには,互いに足元のローカル(地域)な集団同士の連携が欠かせない.国内の学会をまとめていくとともに,近隣諸国の学会との連携を強化し,北米,欧州に対するアジアを考えていくことが21世紀に必要である.あるグループで10数年ほど前に地域の国際化の検討を行い“グローバルかつローカルな視野に立つことの重要さ”から,「グローカル」という言葉を作り使ったが,最近このグローカルという言葉が一般にも使われ始めているようで,耳にするようになってきて驚いている.

グローカルという考えは,大小の組織や組織に属する人間にも当てはめられる.ソサイエティでも学会でも,属する組織の大小に関係なく等しく利益を享受し活動に参加してもらうことは当然である.その運営もまた,より幅の広い組織から人材を求め協力してもらうことが大切だと思う.一部の大組織に偏らずに,個人能力レベルで十分貢献してもらえる体制作りが必要である.是非いろいろなレベルでのグローカルな学会活動を活発化し,学会本体もソサイエティも一層の発展を期したいと思う.


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