The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


意志と判断と実行による進化論

編集理事 須藤昭一

 さて,進化論のような大きな話題をこのような短い記事で取り上げることが,果たして良いことかどうか甚だ疑わしい限りですが,あえて取り上げる無謀さを読者諸氏にはお許し願いたい次第です.

 と申しますのも,ダーウィンをはじめとする進化論は,進化論というより変化論を述べているにすぎないように私には思えるからです.広辞苑や生物学辞典や医学辞典などを見てもやはり「進化論」の項目には変化論的な説明しかなく,かろうじてWebsterの中に「a process of change in a certain direction」の記述があり,directionという変化と進化を区別する重要な言葉が記述されております.この進化ということをより論理的に説明するために提案されたのがベルクソンの「創造的進化:生命のはずみ」論であり,J.モノーの「生物固有の合目的性」であるわけですが,こうした説でさえ,なぜ進化が起るのか?というより本質的なことになると,その説明は十分とはいえない状況にあると思います.

 生物はそれだけ不思議な存在だと言ってしまえば,それまでですが,ここで私は大胆?にも「意志と判断と実行による進化論」という新説を提唱したいと思う次第です.この説を述べる本意は,歴史的な大学者の方々を向こうに回して新説を唱えることではなく,本学会の方々更にはより多くの日本の方々に,前進の意志を共有させて頂くことにあります.すなわち,これまで地球上に棲息してきた様々な生物(もちろん人類も)はそれぞれに「意志と判断と実行」によって進化を成し遂げてきたということです.では蛙に意志と判断と実行があるのか?ということになりますが,蛙は反射脳でしっかりこれを行っております.もしそうでなければ,蛙が蝿を食べようとした瞬間に自分が蛇に食べられてしまうということになります.地球大進化の中で,数億年の太古,環境の変化によって,陸上へ進出を果たした原始の生物も,自らの生存をかけて,自らの意志と判断と実行を行ったというのが本進化論の主旨です.人類が森から草原へ出て直立歩行を決行したのも同様の経緯と考えます.ちなみに,現代に生きる私どもは,こうした生物の「意志と判断と実行」による進化の歴史を脳の構造(人間の脳は,は虫類の脳:反射脳とほ乳類の脳:情動脳と新ほ乳類の脳:理性脳の三つの脳から構成されています)とDNAの中にしっかり保持しております.

 こうした環境変化に対する柔軟かつ強じんな進化の歴史を有する私ども人類は,特に脳のネオトニー化(柔軟化)がより進み,変化への対応能力が一層優れたものとなった日本人(正確にはモンゴロイド)は,今後の環境変化に対してより柔軟に対応する能力を備えております.そこで読者諸氏に,是非「意志と判断と実行」によって,今後の発展(進化)を成し遂げようではありませんか!と訴えさせて頂き,合わせて行動の開始とその成功と更に北島選手のように「やった!超!気持ちいい!」という歓喜が聞けることを願いつつ,本文を終わりたいと思います.


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