【 PHS技術を用いた加入者系 無線アクセスシステム (1.9G-FWAシステム) 】




3. 導入の考え方,期待される効果

■3.1 導入の考え方
 1.9G-FWAシステムは,有線系のアクセス設備では高コストになるような地域における設備コストの削減を目的に導入している.  平野部の酪農地域など,お客様が広範囲に散在する低加入者密度エリアでは,有線ケーブルの線路長が長くなり,1回線当りの設備コストは住宅密集地域に比べて高くなっている.このような地域では,有線システムのように面的にアクセス設備を構築するよりも,無線基地局などをポイントで配置した方がコスト面で有利になる.また,電柱などが不要となることから,固定資産のスリム化やケーブル,引込み線区間が減少することによる保守費の削減などが考えられる.本システムは,これらの経済効果を総合的に評価し,老朽メタリックケーブルの更改に合わせて導入している.  

■3.2 導入メリット
 1.9G-FWAシステムの導入により期待される効果として以下の点が挙げられる.

 (1) アクセス設備コストの削減
 加入者密度が低いエリアでの老朽メタリックケーブルの経済的な更改や無線化によるケーブル・電柱等の撤去により固定資産のスリム化が可能である.

 (2) 耐災害性・保守性の向上
 ケーブルや引込み線が減少することにより,台風や豪雪によるケーブル切断等の通信障害が減少する.特に,台風による自然災害が多く,ケーブル故障時の駆けつけ時間がかかる島しょ部では,サービス品質の改善が期待できる.

 (3) ISDNサービス提供エリアの拡大
 これまで,電話局から遠く離れたお客様に対して,伝送損失等の制約からメタリックケーブルでは提供ができなかったINSネット64の提供が可能となる.

 (4) 高速・広帯域需要への即応性の向上
 加入者交換機から無線基地局装置までは光ファイバケーブルを使用することから,高速・広帯域需要が発生した場合,従来に比べて早期に光回線を開通させることが可能となる.  

■3.3 導入状況  1.9G-FWAシステムは,1998年11月に北海道帯広地区で初めて導入され,アナログ電話サービスを提供している.また,ISDN・専用線等をサポートするシステムは,2000年3月より鹿児島県の徳之島犬田布地区でサービスを開始しており,今後は島しょ部を中心に導入が予定されている.



4. ま  と  め

 1.9G-FWAシステムは,低加入者密度エリアにおける高度通信サービスの提供や設備コストの削減が可能なシステムである.
 本システムは,低速・狭帯域サービスを提供するものであるが,156Mbit/s以下のサービスに対応した高速・広帯域のFWAの開発・導入も活発に進められている.お客様の多様なニーズに迅速かつ柔軟にこたえるために,今後のアクセス網は,地域特性や設備状況を踏まえて,光ファイバやメタリックケーブルなどの有線システムと無線システムを組み合わせて構築していく必要がある.アクセス網の高度化や経済化の実現のために,無線システムの果たす役割はますます重要になると考えている.





文     献

 (1) 郵政省ホームページ 審議会,報告書等/電気通信技術審議会/第105回,http://www.mpt.go.jp/policyreports/japanese/teletech/80612b01.html

 (2) 瀬川,買場,“PHSワイヤレス・ローカル・ループ(WLL)の動向,”NTT技術ジャーナル,June 1996.

 (3) “第2世代コードレス電話システム標準規格(RCR STD-28 3.3版)”電波産業会.

 (4) “PHS MoU DOCUMENT,” PHS MoU Group.

 (5) 永松,進藤,ほか,“1.9GHz帯加入者系無線アクセスシステム(λシステム)の開発,” NTT技術ジャーナル,Dec. 1998.





鈴木 正延(正員) すずき まさのぶ

 平2早大・理工・電子通信卒.同年NTT無線システム研究所入所.以来,主に衛星通信用干渉補償方式の研究,パーソナル通信用音声品質改善方式及び誤り訂正方式の研究開発に従事.
現在,NTTアクセスサービスシステム研究所にてλシステムの開発に従事.



下川 清志(正員) しもかわ きよし

 昭51東北大・工・電子卒.昭53同大学院修士課程了.同年日本電信電話公社(現NTT)入社.以来,衛星通信システム,アクセス系無線システムの研究・開発に従事.
元NTTアクセスサービスシステム研究所ワイヤレスアクセスプロジェクト担当部長.


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