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電子情報通信学会会誌
Vol.83 No.11 pp.808-812 2000年11月 |
山下榮吉:正員 電気通信大学名誉教授
Simulation Engineering as Integrated Technologies. By Eikichi YAMASHITA, Member (Professor Emeritus, University of Electro-communications, Home Address : Hachioji-shi, 193-0833 Japan). |
■ABSTRACT■
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シミュレーションの科学は様々な分野で発展してきた.費用のかかる実験,あるいは危険な作業を行わなくても結果を推定できる機能は極めて有用である.更に,入力パラメータを選択して最適の結果を求める段階に達すれば,シミュレーション工学といえよう.シミュレータはコンピュータを使用してシミュレーション工学を具体化するためのソフトウェアである.本稿ではマイクロ波シミュレータの例について構成と歴史を述べ,本学会マイクロ波シミュレータ研究会の目的と活動内容を説明する. キーワード:マイクロ波,シミュレータ,シミュレーション,CAD |
情報通信工学の応用としての通信装置では発振器部,変調部,伝送部,アンテナ,復調部,表示部等の一連のシステムが最適に設計され構成されている.この背景には情報工学,電磁気学,電子工学,電気回路学,材料工学,機械工学などの技術があり,それぞれの技術が発展しつつ総合される.このように工学には,各分野の成果を総合して社会に役立つ物を経済的に作り出す目的があるから,解析だけでなく最適に合成あるいは設計するという概念が含まれている.
いわゆるシミュレーションの科学は様々な分野で発展してきた.費用のかかる実験を行わなくても,あるいは危険な作業を行わなくても,結果を推定できる機能は極めて有用なものである.シミュレーション工学とは,単なるシミュレーションではなく,コンピュータを利用して解析と設計まで行う総合的技術であり,シミュレータとはコンピュータと組み合わせてシミュレーション工学を具体化するソフトウェアである. マイクロ波シミュレータの例では,偏微分方程式の境界値問題あるいは能動回路の非線形問題に対処しなければならない.このシミュレータは機能別に次の要素から構成される. @ (コンピュータ) A 解析合成手法ソフトウェア B 諸関数ソフトウェア C 線形方程式解法ソフトウェア D 非線形方程式解法ソフトウェア E 領域自動分割ソフトウェア F 画面表示ソフトウェア G 入出力インタフェースソフトウェア 更に別の角度からコンピュータとしての役割を考えると,シミュレータ内部は次の構成となっている. @ (コンピュータ) A エンジン(解析合成手法) B ライブラリ(関数計算法,線形及び非線形方程式解法,自動分割法) C フレーム(画面表示,入出力) 周知のようにコンピュータの機能は日進月歩し,計算速度を早め,記憶容量を増加している.解析合成手法については,有限要素法のように積分から出発する方法から時間領域差分法のように差分から出発する方法まで,多くの研究結果が競って発表されている.ベッセル関数のように複雑な関数の値も短時間で計算されて与えられる.線形方程式に現れる行列も最近では驚くほど多次元のものが短時間で処理されている.解析する領域も自動分割が工夫され,画面表示も分かりやすく美しくなりつつある. それぞれの要素技術は進歩を繰り返し,その結果は他の技術にも取り入れられる.したがってコンピュータ工学,数学,ソフトウェア工学,電磁気学,電気回路学,ハードウェア製作の各専門技術者が最新の研究成果を提供することにより総合し新しいシミュレータが生まれる. |
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