表1 CGアルゴリズムの発展と実現された代表的実時間CG装置
アルゴリズム
デバイス
代表的実時間CGシステム
システム名
特  徴
1967:同次座標系に関する理論
1969:隠顕法(Scanline algolithm)

1971:曲面表示法(Smooth shading)
1973:陰影法(Phong shading)
1974:Reentrant clipping



1978:Shadow
1979:Ray tracing
1981:Antialiasing
1983:MIP map
1984:Radiocity,Transparency
    Volume Rendering




1994:Shea-Warp for volume rendering

1998:Image Based Rendering







1971:1チップマイコン i4004

1974:CMOS SRAM
1976:16Kbit DRAM




1979:64Kbit DRAM
1980:16ビットマイコンMC68000
1983:VRAM, 60Hz color CRT
1984:IMbit DRAM,256Kbit SRAM





1994:Rendering Chip(3DLabs)
1995:Pentium(Intel)



2000:Emotion Engine, Graphics Synthesizer
1963:Sketch pas
1967:NASAU(GE)


1970:COMPU-SCENE I (GE)
1971:VITALU


1976:SPI(E&S)


1982:SP3T

1980:年後期:CT-5 (E&S)
     MODDIG (Singer)
     COMPU-SCENE V (GE)
1988:PT2000 (GE)
1989:Pixel-Plane 5(UNC)


1992:Reality Engine (SGI)
1990:年代前期 ESIG4000 (E&S)
     COMPU-SCENE W(GE)


1999:VolumePro500 (Mitsubishi)
2000:Play Station 2 (Sony)
ライン
ポリゴン

ポリゴン(スキャンライン)
夜間シーン専用、ランダムスキャン



テクスチャ

ポリゴン(テクスチャ、
Zバッファ、
アンチエリアシング)
初のZバッファ
高並列

計算と映像発生の融合




ボリューム(レイキャスティング)



 2.2 実時間CG応用システムの発展

  実時間CG応用システムの歴史について概観する.1971年に,エアライン用シミュレータのビジュアルシステムに,それまでの箱庭・TVカメラ方式に変って,CG方式のMcDonnell-Douglas Electric社製VITAL-Uが初めて採用された.これは夜間専用でランダムスキャン方式のCRTが用いられ,光点のみを2,000点表示できた.その後,面表示能力が付与され,夜間及び薄暮用ビジュアルシステムとなり,1970年代の終りに開発されたE&S社製SP2はエアラインで広く使用された(表1).

 軍用としては,1950年代からGE(General Electric Co.)などで,ビジュアルシステムとしてのCGの可能性が研究されていた.1972年に初めて,パイロット訓練におけるCGの有効性の研究用にADM(Advanced Development Model)という装置が米海軍に納入された.軍用ビジュアルシステムは昼間シーンが重要視され,この装置は500エッジ(ポリゴンの辺)のシーンを発生することができた.以後,各種のミッション(射爆撃,物量投下等)訓練用の複雑な昼間シーン発生のために面表示能力は漸次向上し,1980年代後半には表示能力は8,000面に達した(CT-5, COMPU-SCENEX等;表1).

 1990年代初頭は軍用シミュレータが最も発達した時期であった.特にミッションリハーサルシミュレータと呼ばれる装置のビジュアルシステムは大量のポリゴン表示能力と実際の空中写真から作られたテクスチャを用いて,実在の特定領域を高忠実度で摸擬することができた(COMPU-SCENEY,ESIG 4000等;表1).筆者らもそのカテゴリに属するシステムを1994年に試作した(図1)(19),(20).これらの発展は,前記アルゴリズムの発達,LSI技術の急速な進歩及び豊富な軍関連予算によってもたらされたものと考える.しかし,1989年のベルリンの壁崩壊以降,軍関連予算は縮減され高性能ビジュアルシステムの発展は停滞している.

 一方,技術計算・設計用の計算機(エンジニアリングワークステーション,EWS)の中でグラフィック機能が高いGWSと呼ばれる製品のグラフィック機能が向上し,GWSがシミュレータのビジュアルシステムとして使用可能となってきた.現在は,パソコン,PS 2やゲームセンタなどのゲーム機,コマーシャル映像,「ターミネーター2」や「ジュラシックパーク」などの映画等の民生機器が技術開発の牽引力となっている.それに,遺跡の復元映像,分子構造の可視化,天体の構造の可視化,体内の可視化などの研究・教育分野や工業用仮想現実感などへの応用もCG技術を牽引している.



図1 筆者らが試作した高性能ビジュアルシステムの出力映像例  
  シーンは,北海道北西部のある実在の地域を表し,空中写真を基に作成した標高データとテクスチャから生成した.地表は所定の誤差でポリゴン数が最少になるように三角形化されている.



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