電子情報通信学会会誌

Vol.84 No.11 pp.775-781
2001年11月
小川晃一 正員 松下電器産業株式会社デバイス開発センター
E-mail ogawa@mimi.drl.mei.co.jp

High-Performance Technologies for Portable Radio Antennas : Toward the Harmony of Antenna, Propagation, Human Body and System. By Koichi OGAWA, Member(Devices Development Center, Matsushita Electric Industrial Co., Ltd., Osaka-fu, 571-8501 Japan).

■ABSTRACT■
アンテナ,伝搬,人体,システムの統一的な取扱いの結果として,携帯端末アンテナの高度化・高性能化が達成される.本稿ではこのような観点から,実用化例を織り交ぜながら最新の技術動向を紹介する.


キーワード:携帯端末機器,小型アンテナ,電波伝搬,人体影響,ダイバーシチ




■1. ま え が き 

携帯電話や携帯情報端末などの携帯端末機器が急速に普及していく中で,電波の出入り口であるアンテナには,小型・高性能化が強く求められている.携帯端末アンテナには固定通信アンテナとは違った多くの特徴がある.その特徴,課題と克服技術を図1にまとめて示す.図1は携帯端末アンテナの性能が,無線機きょう体,人体及び電波伝搬などの外部環境に強く依存していることを示している.すなわち,携帯端末アンテナの設計とは,アンテナ単体としてではなく,これら外部環境を含めて考えた「アンテナ系」の最適化問題として取り扱うのが適当である.アンテナとしては他の固定通信アンテナとなんら変りがないが,図1の矢印で示したような相互に関連する事項を統合して考える必要があり,問題を極めて複雑にしている.最近,この問題に対してシステム的な観点からアプローチし,アンテナ設計学の視野を広げる新しい研究もされ始めている(5.参照).



図1 携帯端末アンテナの特徴,課題その克服技術

本稿ではこのような最新の研究成果も踏まえて,携帯端末アンテナに関する技術を概観する.携帯端末アンテナの技術は多岐にわたっているが,ここでは小型・高性能化を考える上で,今後ますます重要となると思われる図1の克服技術に沿って,最先端技術の一端を紹介する.


■2. 携帯端末アンテナの構成

図2は携帯端末アンテナの典型的な構成を示したものである.図の例では現在国内で実用化されているディジタル携帯電話(PDC方式)のダイバーシチ(用語)アンテナを示した.ホイップアンテナは送受信兼用で,図のホイップアンテナと内蔵アンテナで受信ダイバーシチを行う.ヘリカルアンテナはホイップアンテナをきょう体内に収納したときに送受信アンテナとして機能する.アンテナ構成はシステムによって変化し,例えば欧州のディジタル携帯電話(GSM方式)ではダイバーシチは行っておらず,送受信アンテナも固定式のヘリカルアンテナや内蔵アンテナが主に用いられている.

図2 携帯端末アンテナの構成例



図1の構成で,ホイップアンテナについては以前に説明している(1),(2)ので,本稿ではヘリカルアンテナと内蔵アンテナについて,実用化されている最新技術を中心に解説する.




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