■5. メディア教育開発センターの役割


 一般的な通学制の大学でネットワークを利用した学習と試験で単位を与える制度が定着するためには,

@ インフラの整備,教材コンテンツの収集,多面的な教材評価,配信システム等の整備がまず必要である.

 更に重要なことは,

A 日本の大学生が,いつ,どこで,どのような学習形態で学習時間が確保できるかである.

 例えば,通学途中にリスニング学習を行うなどの時間確保の工夫や個別学習の習慣化のための訓練も必要である.また,

B 従来の衛星通信を利用した遠隔教育や対面授業,CD利用の個別学習に比べ,どのような教科や学習内容がネットワークを利用した学習に適しているかを検証する必要がある.

 更に,

C 教材の質を上げるために,プロデュース,映像の質,音響効果などの面から制作環境やスタッフの整備,教材の多面的評価法の確立が重要である.

 メディア教育開発センターでは,実用化に向けた検討を行うワーキンググループを発足させ,上記の問題を解決することによって,大学やコンテンツメーカーにとって不可欠な組織としての役割を果たすことを考えている.筆者らは大学等との共同研究によって実用化に向けた研究を進めており,ここでその一部を紹介する.

 (1) 新しい教材配信方式の提案

 現在,教材の配信方式として@インターネットによる配信方式とA学内LANによる教材配信方式が一般的である.@のインターネットによる配信方式は教材の構造 (プラットホーム)に関係なくインターネット上(html)で学習することができるが,学習者のすべての学習記録や成績等が外部にも分かるため,大学では歓迎されていない.また,Aの学内に教材用サーバを設置し,学内LANを利用して学習する方式も一般的であるが,教材ごとにプラットホームをそろえる必要があり,システムの運営上,混乱が生じることが予想される.そこで,国際的にプラットホームの共通化(標準化)を模索しているが,既に多くの異なるプラットホームを利用した教材が流通しているため,標準化には多くの問題がある.

 そこで,学内に学習者管理サーバを設置し,学外の教材サーバのプールから教材コンテンツを配信する新しい方式を提案し,平成14年度にメディア教育開発センターが作成する教材からこの方式を利用することにしている.この方式は,すべての学生の学習記録や成績は学内に保存されるが,学外の多くの教材をインターネット上で利用できるという利点を持つ(図1).

 

従 来 の 教 材 配 信 方 式

 

新 し い 教 材 配 信 方 式

図1 新しい配信方式と従来の方式の比較



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