(3) エンドポイント方式

 ネットワークの内部状態を推定するための機能をエンドポイントに持たせ,アドミッションコントロールを行う形態である.エンドポイントをホストとする場合と,バックボーンネットワークへのアクセスルータとする場合が考えられる.ネットワークは基本的にDiffServネットワークと考える.したがって,コアルータではリソース予約を行うためのシグナリングプロトコルを使用しない.(1)とは異なり,ネットワークの内部状態を推定する手段を用いることにより,より的確なアドミッションコントロールが可能になる.その手段により,プローブフローを用いないパッシブ方式とデータフローごとに,プローブフローを用いるアクティブ方式に分類される.

 (@) パッシブ方式

 エンドポイントでパケットを観測することにより,網の内部状態を推定し,アドミッションコントロールを行う方式である.具体的なイメージを以下に示す.

 @ サービスエンベロープ方式(11),(12)

 バックボーンネットワークの出口ルータでパケットを観測し,サービスエンベロープを推定する.サービスエンベロープを計算するためには,出口ルータはパケットの退去時刻に加え,そのパケットがネットワークの入り口ルータに到着した時刻が必要である.入り口,出口ルータの時計が同期している場合は,入り口ルータでパケットにタイムスタンプすればよい.同期していない場合は,各ルータでキュー時間を計算し,これをヘッダ内のキュー時間累積値に加算する.アプリケーションはリソース予約メッセージ(トラヒック仕様とQoS要件を含む)を生成する.予約メッセージは出口ルータに転送され,そこで,サービスエンベロープに基づいて,アドミッションコントロールが行われる.

 A 外部通知方式

 網のふくそう情報をエンドポイントへ通知することにより,エンドポイントにおけるアドミッションコントロールをサポートする方式である.ルータでリンクのふくそう状態により,パケットにマーキングを行い,エンドポイントへ通知する方式が考えられる(13),(14).エンドポイント間に十分なフローのトラヒックがない場合にはエンドポイントに網情報が的確に伝わらない.そこで,プローブフローを加えることが考えられる.これは,データフローの不足を補う補助的なものでデータフローごとに生成されるものではなく,その取扱いはデータフローと区別されないので,以下に述べるアクティブ方式とは区別する.別のアプローチとして,ルータでTCP SYNまたはSYN/ACKを識別し,ふくそう時にTCPコネクションの確立要求をブロックすることにより,アドミッションコントロールを行う方式が提案されている(15)

 パッシブ方式は網にデータフローごとにプローブパケットを加える必要がないのがメリットである.また,以下に述べるアクティブ方式と比べて,より長時間のスケールでネットワークの定常的な状況を把握しやすい.一方,入り口,出口ルータの機能が複雑化するとともに測定のための処理量が大きい.これを軽減するにはサンプル測定が考えられるが,ネットワークの内部状態の推定精度は低下する.入り口・出口ルータ間での測定にはアクセスネットワークとバックボーンネットワーク間のリンクの状態は反映しないので,エンドポイント間のQoSとは直接対応しない.バックボーンが複数のDiffServドメインからなる場合には,入り口・出口ルータの測定に関して,ISP間の協調が必要になる.

 (A) アクティブ方式

 エンドポイント間に,アドミッションを要求する新フローと同等のレートでプローブフローを加え,そのQoS(パケット損失率,遅延ジッタ等)を観測することにより,ネットワークの内部状態を推定し,アドミッションコントロールを行う方式である(図3).プローブパケットには,プローブの時間長,レート,フローのID等を含めることができる(17).この方式はエンドツーエンド測定に基づくアドミッションコントロール(EMBAC:End-to-end Measurement Based Admission Control)と呼ばれる.近年,種々の方式が提案されている(5),(16)(27).その概要を4.に述べる.




図3 エンドポイント方式におけるアクティブ方式の原理
エンドポイント間にプローブフローを加え、プローブフローのQoS測定結果に基づいてアドミッションコントロールを行う.


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