電子情報通信学会誌

Vol.86 No.2 pp.74-77
2003年2月

中井俊樹 名古屋大学高等教育研究センター
 E-mail nakai@cshe.nagoya-u.ac.jp

Teaching Tips for Faculty Development. By Toshiki NAKAI, Nonmember (Center for the Studies of Higher Education, Nagoya University, Nagoya-shi, 464-8601 Japan).



大学教育改善のためのティーチングティップス 中 井 俊 樹


■1. は じ め に

 ティーチングティップスとは,「教科書を選ぶときのポイント」「第一回目の授業ですること」「授業でディスカッションを成功させるコツ」など,日々の教育活動における教員の疑問や悩みを解決するためのヒントやノウハウをまとめたものである.名古屋大学高等教育研究センター(以下,センター)は,2000年3月に名古屋大学のためのティーチングティップスとして『成長するティップス先生−名古屋大学版ティーチングティップス』(以下,『ティップス先生』)をホームページ上で公開した(図1).北米の大学を中心にティーチングティップスをまとめている大学もあるが,日本の大学においては初めての試みであった.本稿では,『ティップス先生』の開発と現在までの成果について報告することで,大学教育改善におけるティーチングティップスの役割について考察したい.

図1 トップページ

図1 トップページ  http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/tips/


■2. サ イ ト の 内 容

 『ティップス先生』の開発のねらいは,大学教員が授業の現場で役に立つ情報を提供することである.そのため内容の実践性を重視している.例えば,学生が質問しやすいように「授業のあとで少し教室に残ってみよう」や,課題の提出に関するトラブルを防ぐために「学生の課題は本人の手元にもコピーを保存させよう」といった具体的な実践例を提案している.

 このように『ティップス先生』は場面ごとのヒントやノウハウをまとめたものであるが,内容全体を通して重視した考え方がある.それは,コースデザインという考え方である.コースをデザインするとは,一回一回の授業とそれらをまとめたコースを区別し,到達目標,授業内容,授業のルール,授業時間外の学習,成績評価などのコースの全体像を設計することである.授業中の私語の問題に対して「第一回目の授業で受講のルールをきちんと説明し学生と契約しよう」や,「課題や教材をまとめたコースパケットを作ってシラバスと同時に配布しておこう」といった提案はコースデザインの考え方に基づいている.



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