■2. 日本,米国,欧州の特許庁の対応

 日本特許庁は,ビジネスモデル特許のブームに対し,2000年10月,ビジネスモデル特許はソフトウェアの特許として審査するとの,対応を発表し,2000年12月に,ビジネスモデル特許の審査基準を明確にした,改訂審査基準を発表した.また,2001年4月,「特許にならないビジネス関連発明の事例集」を公表した.特許を認めることのできない出願が多く見受けられたためであろう.当時は,特許が認められる条件について,誤った認識があったようだ.例えば,既存のビジネスをインターネット上で展開したものにも特許が認められるとか,新しいビジネスモデルであれば特許が認められるとか,認識していた人が多かったようだ.

 米国特許庁は,2000年2月に,ステートストリートバンク事件の判決を考慮して,審査マニュアルを改訂した.2000年3月には,ビジネスモデル特許の審査の質を上げるためのアクションプランを発表した.

 欧州特許庁は,2000年8月に,ビジネス方法の特許性についての発表をし,2001年10月に審査基準を改訂した.


■3. ビジネスモデル特許の実態は,ソフトウェアの特許


 ビジネスモデル特許の実態は,ソフトウェアの特許であった.ステートストリートバンク事件において問題となった特許はソフトウェアの発明であり,1999年末の特許権侵害訴訟の特許も,純粋なビジネス方法の発明ではなく,ソフトウェアの発明であった.2000年6月に日米欧の三極特許庁専門家会合が開催され,ビジネスモデル特許の審査の比較研究が行われたが,ここでの研究対象の事例も,コンピュータを利用したビジネス関連発明であった.

 特許が認められるためには,特許適格性,新規性,進歩性の三つの条件を満たさなければならないこと(図3)は,日米欧で共通しているが,この特許適格性の具体的な審査基準については日米欧で異なっている(図4).ソフトウェアの発明においてこの特許適格性がよく問題となっていた.ステートストリートバンク事件で問題とされたのも,特許適格性である.特許適格性が認められなければ,新規性,進歩性の判定を受けることができない.いわゆる,門前払いとなってしまう.



図3 特許が認められるための要件


図3 特許が認められるための要件

 

図4 日本,米国,欧州の特許適格性の判断基準

図4 日本,米国,欧州の特許適格性の判断基準


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