■4. 日本,米国,欧州の特許庁の特許適格性の基準

 ビジネスモデル特許の審査の比較研究を行った三極特許庁専門家会合の事例を用いて,日本,米国,欧州の特許適格性の判断基準について,簡単に説明をする.

 日本の特許法では,特許適格性が認められるためには「自然法則の利用」が必要である.ハードウェアの発明であれば当然「自然法則の利用」があり,特許適格性は問題とならないが,ソフトウェアの発明では直接的な「自然法則の利用」はなく,その判断基準が問題となる.ソフトウェア関連発明の審査基準では,単なるコンピュータの使用を越えるハードウェア資源の具体的な利用が認められれば,「自然法則の利用あり」とし,特許適格性を認めている.審査基準ではこのことを「ソフトウェアとハードウェアとの協働」と呼んでいる.

 例えば,ポイントシステムにおいて,ポイントに利子を付ける発明があった場合に,個人ごとにポイントを管理するデータベースの構造と,そのデータベースを用いてポイントの利子の計算をする処理があれば,「ソフトウェアとハードウェアとの協働」が認められ,特許適格性があることになる.(三極特許専門家会合報告書より)

 ステートストリートバンク事件の判決では,特許適格性が認められるためには,“有用で,具体的,かつ,有形的な結果(a useful, concrete and tangible result)”が必要とした.この判決を受けて,米国特許庁の審査マニュアルが改訂されたが,大きな変更はなく,1996年2月のソフトウェア関連発明の審査ガイドラインと実質的には同じ内容であった.それは,“実用的な応用(Practical Application)”があれば,特許適格性を認めるが,そうでないものは,抽象的なアイデアとして,特許適格性を認めないというものである.“実用的な応用(Practical Application)”が認められるためには,コンピュータ内部での計算内容だけでは不十分であり,現実の世界と結びつける具体的な処理(印刷等の出力)を伴う必要があるとしている.

 例えば,ポイントに利子を付ける発明の場合には,利子を計算する部分だけでは,抽象的なアイデアとされるが,求めたポイントで商品と交換するという処理を追加すれば,“Practical Application”と認められ,特許適格性があることになる.(三極特許専門家会合報告書より)

 欧州においては,「技術的特徴」を特許適格性の要件としている.審査基準では,コンピュータが通常有する物理的効果を越える更なる技術的効果を必要としており,技術的な課題を解決するものか否かで判断している.処理速度を向上させるとか,メモリ資源を節約するなどの技術的課題を解決するものだけが特許適格性が認められるようだ.

 上述したように,欧州の特許適格性の判断基準はアイデアの本質にかかわるものであるのに対し,日本と米国の特許適格性の判断基準は,特許出願の書類(明細書)作成において,ある程度,対応できるものである.

 



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