■2. 高次脳機能イメージング

 2.1 方法論について

 図1に脳機能イメージングの基本的な考え方を示した.方法論は二つの範ちゅうに大別される.一つは脳を閉鎖系ととらえて,積極的に内部に情報キャリヤを送り込んで,脳内情報を取得する方法論である.もう,一つは脳を開放系ととらえて,神経活動に伴う磁界が脳の外へ漏れ出したものによる微弱な信号を検出する方法論である.前者には,機能的磁気共鳴描画 (fMRI:functional Magnetic Resonance Imaging),近赤外光トポグラフィー (NIRS-OT:Near Infra-Red Spectroscopic Optical Topography (略称:OT)) があり,後者には脳磁図(MEG:Magneto-EncephaloGraphy)がある.

図1 脳機能計測方法論
(a) 閉鎖系
(b) 開放系


図1 脳機能計測方法論


 脳と心を見る脳機能イメージングは,医療分野のみならず健康な人々も計測対象となるため,何よりも安全であることが大切である.図2に生体への安全性の基本的な考え方を示した.上記の脳を閉鎖系としてとらえた計測法では,情報を脳の外へ取り出すために情報キャリヤを脳内に送り込む.情報キャリヤは,多くの場合,光子(photon)が使用される.光子は日常的な素粒子であるが,質量も電荷もないという点で極めて特殊な素粒子でもある.図2に示すように,人体組織を形成する化学結合のエネルギーは低いものでも数eVである.この化学結合エネルギーよりも高いエネルギーを持った光子は,この化学結合を切る可能性があるが,この化学エネルギーよりも低いエネルギーを持った光子は高次遷移を除いては,この化学結合を切る可能性はない.強度(光子の密度)がWのオーダでは高次遷移は起らない.基本的には熱の問題だけを議論すればよいことになる.例えば,紫外線は日焼けや雪盲などを引き起すが,可視光や赤外光はそのようなことがない.近赤外光トポグラフィーは太陽光より弱い近赤外光(10mW以下)を使用するので基本的に安全である.また,fMRIは電波帯の光子を使うので基本的に安全である.ただし,fMRI/MRIについては磁界の安全性については強度に関するガイドラインが存在する.


図2 生体への安全性

図2 生体への安全性



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