■3. UWB無線システムの研究開発

 UWBシステムの商用化に必要な研究開発,標準化,法制化などの一連の作業を,米国を初めとする諸外国と競争,協調して実現するためには,研究開発経費などの経済的負担,技術や知的財産権の蓄積,専門技術者や研究者の集結のすべてが必要であり,時節を逸せずそろってこそ可能となる.この実現のために,独立行政法人通信総合研究所(CRL,平成16年4月1日より独立行政法人情報通信研究機構(NICT)に改組)ではUWB結集型特別グループが2002年8月に結成された.更に,NICTは横須賀リサーチパーク(YRP)協議会の協力を得て,UWB関連技術を専門とし新ビジネスを創生する企業メンバーと,関連する要素技術を専門とする大学メンバーによる産学官連携に基づく技術組合であるコンソーシアムが同年10月に設立された.

 本稿がUWB技術を取り巻く技術,標準化などの諸問題の概要を理解し,ユビキタス時代の無線通信の新たな研究課題の探索や解決法の創造に貢献できることを期待している.

 3.1 NICTにおけるUWB研究開発プロジェクト

 NICT(旧CRL)では,マイクロ波帯(3〜30GHz)からミリ波帯(30GHz〜)に至る周波数帯を使用するUWB無線システムについて,デバイスからシステムまでの一体的な研究開発を4年後の実用化・標準化を目指して,平成14年度から研究開発プロジェクトを開始している.参照:http://www2.nict.go.jp/mt/b189/j/top/top.html

(1) 背景と目的
 本プロジェクトでは,既存システムとの周波数共用が可能となる技術を確立し,電波の有効利用に資することを目的として研究開発を推進している.マイクロ波帯からミリ波帯に至る周波数スペクトルを有するUWB無線システムは,デバイスから方式に至る一体的な研究開発が必要とされる.特に,本研究開発で実現されるUWB無線システムは,コンピュータ間,携帯情報端末間アドホック通信などに対して,これまで以上の高速ワイヤレス通信(100Mbit/s以上)を容易に可能にする.このため,社会生活に大きな恩恵を与えるほか,新ビジネスの創出及び標準化の進展による新商品の開発が進み産業振興に寄与することが期待できる.

(2) 基本方針
(a) UWBを中心とする情報通信分野の究極ビジョンを達成するための基礎理論と基盤技術の知的財産権を確保すること.
(b) その実用化に価値をおき,プロジェクトの成果を民間に技術転用すること.
(c) NICTの官の立場に立ちUWB技術に基づく商品化や国際調整に必要な技術基準,標準化,技術適合証明などの電波法改正などにかかわる技術を中心に法制度の整備を含めた行政業務に貢献すること.


(3) 発足と運営
(a) 発足:UWBの専門家を中心に活躍されている研究者を国内外の研究機関から招き,専任,出向,兼業,併任,嘱託,派遣などの形態を活用し,時節を逸せず速やかに発足し,5年間以内の時限プロジェクトとしている.
(b) 運営:NICTを起点としたNICT全体のプロジェクトとし基本方針(a)〜(c)に関する活動を実施する.特に,UWB研究開発コンソーシアムを結成し,産学官連携による研究開発を推進する.更に,国内では総務省の監督下で電波産業会(ARIB),MMAC推進協議会と協力し,国際的には米国FCC,IEEE802委員会,欧州のETSIとPULSERS,韓国のETRI,UWB-Forum,シンガポールのIIRとIDAなどとの技術基準などの標準化や国際調整を含めた協調により,ITU-Rに貢献する.その一環として,UWBに関する二大国際会議UWBSTとIWUWBSを一体化し,2004年5月18〜21日に京都で開催し,我が国の先端UWB技術の公開,国際的な標準化と法制化のため議論を予定している.
参照:http://www1.ilcc.com/uwbst_iwuwbs2004/

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