2.2 高速車々間通信システム

 走行中の車同士で100Mbit/s級の高速通信ができるようになると,様々なアプリケーションが利用できるようになる.ここでは,快適性の観点から車載 LAN 間通信としての車々間通信について述べる.ディジタル家電の普及と相まって車にも様々なディジタル機器が搭載され,それらは車載LANに接続されて,車にもオフィスや家庭と同じような快適な情報空間がもたらされようとしている.この車載LANを車々間通信で結び,音声や映像等の情報を相互に伝送すれば,他の車との間で情報空間を共有することができる.図4にこのような目的で試作された車々間通信システムの構成を示す.


図4 車載LAN間通信としての車々間通信

図4 車載LAN間通信としての車々間通信



 本システムでは,車載LANとして情報系車載LAN規格としても注目を集めつつあるIEEE1394規格を採用し,自車内と他車内間で様々な情報やコンテンツを共有できる「情報共有空間としての車」というコンセプトの実現をねらっている.

 例えば,「ナビ情報の共有」では,友人等と一緒に車で移動するような場合,後続の車がはぐれていないかをミラーで確認することなく,ナビ上の表示によって確認できる.「コミュニケーションの共有」は,例えば,修学旅行など観光バスの車内に設置されたカメラによって,別々の車両にいる人同士が相手の表情,車内の様子などを見ながら自由にコミュニケーションを図れる.「映像コンテンツの共有」では,別々の車両にいながらにしてあたかも同じ映画館や部屋にいるかのように一緒に映画やスポーツ中継を見ることができる.

 本システムは,各車両内に搭載した「車載機器」と,車載機器と無線部を結ぶ「車載ネットワーク」,そして車載ネットワーク同士を無線で結ぶ「無線部」で構成される.無線部の主要諸元を表4に示す.また,車載機器の主要諸元を表5に示す.無線部の高周波部(RF部)は,平面アンテナや一体封止したミリ波帯小型無線モジュールなどの採用により,比較的安価に製作でき小型な構成が可能となるように留意し,車載に適合する装置構成とした.周波数帯としては,利用可能な周波数帯域が7GHzと広大な帯域を持ち,かつ小電力であれば無線局免許も不要な60GHz帯を採用した.


表4 無線部の主要諸元

周波数帯 60GHz帯
送信電力 10mW
変復調方式 FSK
有線インタフェース IEEE1394 (S100)
伝送レート 100Mbit/s
アンテナ 平面パッチアンテナ
アンテナ利得 19dBi

 

表5 車載機器の主要諸元

位置・コンテンツ
管理
CPU:2.8GHz
512M 〜 1,024MByte
HDD:40GByte
エンコーダ 映像方式:NTSC
送信ストリームフォーマット:TS
データフォーマット:ISO / IEC13818-1
伝送レート:4Mbit/s (100 Base-TX)
車載カメラ 映像方式:NTSC
角度Pan:−100〜100°
Tilt:−30〜90°
ディスプレイ XGA (解像度1,024×768)

 


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