3.5 サービスレベル管理とSLA サービスレベル管理は,2.2で述べた,「情報伝達サービス」,「オペレーションサービス」及び「料金サービス」について,その評価すべき内容を定性的・定量的に指標として設定し,その達成度合いを管理することである.この達成度合いについて,SPとカスタマが合意したものがSLAでありその指標は,カスタマから見てサービスの実感を反映し,知覚され,かつ容易に検証可能である必要がある.また,指標はSPが合意に基づいて,サービスレベルの実態をカスタマに報告し,相互にそのレベルを確認できるオープンなものである必要がある「情報伝達サービス」におけるSLAは, (1) サービスの性能を表現する,伝送品質,接続(アクセス)品質に代表される狭義のQoS の3種に大別できる.(1)については,帯域の割当て・確保,パケット損,遅延時間,スループット,無線サービスのカバーエリヤ等の定量的な検討が進められており(12),かつその保証メカニズムに関して各種の提案がなされている.これらの指標は企業通信ネットワークを運用するカスタマにとっては有用な指標ではあるが,一般のカスタマにとっては実感し難い指標となっている.これらの性能指標をヒューマンインタフェースの言葉でどう適確に表現するかが,今後の課題である(13).(2)は,SPサイドのネットワーク構築と人的な保守作業に依存するもので,一般のカスタマはSPの提示する平均値を受け入れることとなるが,特定のカスタマは,リソースの二重化,24時間保守等の採用により,より優れたRASを受けることができる.(3)は,盗聴,改ざん,DOS(Denial
of Service)あるいはウイルス等のネットワークからの侵害に対する防御指標である.一般にはネットワークに組み込まれたセキュリティ機能として表現される. (a) 対応の迅速性,正確性 の3点が挙げられる.(a) では,受付(コールセンタ等)機構と時間帯,応答特性,能動的・受動的なレポートのタイミング,応答内容の適確性,カバー範囲等が表現され,(b)
では,サービスの生成・変更の所要時間,故障回復時間及び顧客先での対応形態等で表現され,(c) では,SP内外からの機械的,人的侵害・漏えいの早期発見と防御等々のメカニズムで表現される.
カスタマニーズの多様化と技術革新による新技術への対応は新しいサービスの開発をますます複雑にしている.また,サービス提供におけるカスタマ指向の考え方はパラダイムのシフトであり,サービスの開発・運用のすべてにおいてカスタマを中心とした従来と異なるアプローチが要求されている.今日,SPにとって品質の安定した情報通信サービスを早期に低コストで提供することはビジネス戦略における最重要施策となっており,カスタマに密着した運用支援が行えるサービス管理の技術開発もまた急務となっている.
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