等多くの状況に応じた変形が考えられる.あるシステムで収集情報の質と量を最適にしようとするとき,まず分解能セルの形成方法と物標の有無の弁別方法を意図的に選定する必要がある.更に,そのシステムを設置しているプラットホームが移動したり,目標そのものが移動体であったりする場合には,そのスペクトルと時間変化による状況変化を精密に分析することにより,得られる情報量が飛躍的に増大する.いま,一例として,移動プラットホームに搭載されたレーダの画素形成のバリエーションを図2に示す.図2(a)はアンテナビーム幅のみで分解能セルを形成している.TV画像はこの例である.図2(b)はアンテナビーム幅1軸とビーム飛翔方向(レンジ方向)をパルス波で区切って分解能セルとする.多くのレーダシステムやアクティブソナーシステムで用いられている.図2(c),(d)は,ビーム幅ではなくFFT等によって形成されるドップラーフィルタによって得られる狭帯域信号とパルス幅によって区切られたレンジ(距離)方向によって分解能セルを形成している.この方法は信号処理によって高分解能化を実現するのに都合が良いが,ドップラー信号が検出可能なコヒーレントシステムでしか適用することができない.更に,コヒーレントシステムでは,各種適応フィルタや,レンジ方向ではパルス圧縮技術(後述)を利用することもできる.当然,方位方向,仰角方向及びレンジ方向の三次元情報も得られる.このように分解能セルを異なったパラメータによって形成する場合でも,最終的に変換される物理的なパラメータ(レンジまたは角度)では,分解能セルの各辺は,原則として同じ長さにそろえることが望ましい.したがって,分解能セルを形成する際に適用される信号処理技術も,このことを考慮して同じ程度の分解能が得られなければならない.

 




図2 移動プラットホームに搭載されたレーダの画素形成法



■3. 物標の検出・認識・識別と信号処理技術

 物標の認識能力の高さは,信号のSN比と分解能セルサイズの双方によって決まる.したがって極端に分解能セルを小さくしてもそのことによってバンド幅が拡大しSN比の低下をきたしたのでは,認識性能は改善されない.この意味でセンシング過程では,ノイズ除去と分解能セルの細分化の双方を意図しながら信号処理技術が活用されねばならない.最近のディジタル信号処理技術は,時空間,スペクトル,あるいはこの組合せの各種ドメインで,様々なフィルタを実現している.特にコヒーレントセンシングシステムは,これらの信号処理技術を活用して,極めて高い分解能の画像を得ると同時に,状況に適応しながら高いSN比を維持して,多くの機能を一つの送受信系から生み出す等の発展を続けている.まず高い分解能を生み出す信号処理技術としては,レンジ方向と,レンジ方向に直交する方向(クロスレンジ方向)で別々の方法が考え出されている.図2から明らかなように,コヒーレントセンシングシステムの分解能セルを小さくして分解能を高めるには,アンテナビーム幅を小さくする,距離分解能やドップラー周波数分解能を高める等の方法がある.このうち,アンテナビーム幅を小さくするには,主に開口径を大きくすればよい.距離分解能やドップラー周波数分解能を高めるにはパルス圧縮技術やスペクトル変換技術等の信号処理技術が活用される.また,状況に適応しながらSN比を高い状態で維持する信号処理方法に様々な適応フィルタ技術が考案されている.最近注目されているのが時−空間適応信号処理技術(Space-Time Adaptive Processing)である.以下これらの技術について最近の傾向を踏まえて概観する.




3/8


| TOP | Menu |

(C) Copyright 2000 IEICE.All rights reserved.