■4.高分解能化信号処理技術

 4.1 レンジ分解能向上技術

 先に述べたように送信パルス幅が狭いほどレンジ分解能は向上する.しかしパルス幅を狭くすればするほど,平均送信電力が小さくなり到達距離が短くなる.そこで,幅の広い送信パルスを用いて,受信側でパルス幅を事実上狭める技術が登場し,パルス圧縮技術と名付けられた.パルス圧縮技術には大別してリニアFM方式と符号方式がある(4),(5).アナログ技術を駆使して初めて開発されたリニアFM方式は図3に示すように,広い時間幅Tのパルス内キャリヤを周波数幅ΔfでFM変調し送信する.受信側では送信周波数の増(減)方向と反対傾向で周波数に応じた遅延時間を有するパルス圧縮フィルタを通す.これにより図示したような出力信号が得られ,パルス幅が1/Δfに圧縮され,振幅は√TΔf 倍に増大される.パルス圧縮フィルタは,周波数に比例して遅延時間が変化する弾性表面波フィルタのような素子によって簡単に実現できる.この方式は多くのシステムで実用に供されているが,遅延素子のような特殊な部品が必要で,かつサイドローブも高い.そこでコンピュータとの親和性も高いことから符号化方式が次々と発表されてきた.符号化方式は,0;π等の位相変調を行ったショートパルスの組合せでロングパルスを作り,受信側で自己相関関数等を求めることによってパルス圧縮効果を得る方式の総称である.図4リニアステップFM方式(5),図5フランクコード(6),図6バーカコード(6) 等はリニアFM方式に続くサイドローブの低減と圧縮率の向上を目指した一連の符号化方式開発の動きといえる.更に,最近の研究成果として,更なるサイドローブ低減を目指した図7に示すフランクコードを発展させた帯域制限型4相パルス圧縮コード(7)がある.更に別のコード方式として図8に示すM系列の1周期から発展させた複素2値直交系列(8)も提案されている.このように距離方向でSN比を劣化させずに分解能を向上させるほとんど唯一の方法として,パルス圧縮技術は,現在でも研究開発努力が続けられている.

 




図3 パルス圧縮方式の発展:リニアチャープによるパルス圧縮
                      (サイドローブが大きい)


 



図4  パルス圧縮方式の発展:リニアステップFMパルス圧縮
        リニアチャープの代りでディジタル化の始まり.




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