3.2 レプリカ製作

 レプリカは石膏やシリコン等の固形化する流体の流し込みで型取りされるので,形状に関して非常に精確な複製を得ることができる.しかし,著しく劣化の進んだ遺物や箔付遺物,木製遺物に対しては型取りによる破損の危険性がある.それらに対しては,非接触な手法で型取りしレプリカを製作する方法が求められている.

 銅鐸のレプリカを作成した例を図4に示す(7).同図(a)に光切断法計測(図1(b))で得られた形状データ(b)から紫外線硬化樹脂型光造形装置で製作したものが(c)で,それを人手で彩色し最終的なレプリカ(d)を得る.加茂岩倉遺跡出土銅鐸は入れ子で埋納された極めてまれな例であり,外銅鐸の内面形状を反映した土が内銅鐸に付着し,その形状も保存したレプリカとなっている.

    (a)銅鐸         (b)ワイヤフレーム       (c)光造形       (d)レプリカ 

図4 光切断計測と光造形による島根県加茂岩倉遺跡出土銅鐸のレプリカ製作

 

 3.3 紋様の可視化と拓本

 拓本は,立体物の紋様やレリーフ等を簡便に可視化する考古学のみならず各方面で多用される資料作成法である.拓本は物体全体のマクロな形状を表現することはできないが,物体表面のミクロな形状を平面図版として表現することに適している.ここでは,実際に拓本を取るのではなく三次元形状データから画像処理で拓本を自動合成した例と,同笵遺物を照合した例について紹介する.

 図5は(a)の寺社軒先の円形飾瓦を接触針式デジタイザで空間,奥行とも100μm精度で形状計測し,それに対し比較的大きなσのガウシアンフィルタで平滑処理し,平滑前の形状データと差分を取った.この手法はDOGフィルタによるハイパス処理であるが,平滑データは拓本に使用する和紙の曲率を模倣したものであるから,差分データの負部分(遺物凹部には墨が付着しない)はカットし,正部分の差分量に応じて白黒輝度変調を施し,(b)の拓本画像を得る.(c)は(a)とは別の瓦破片の合成拓本である.その紋様の一部を照合領域に設定し,凹凸の照合処理から完全に一致した部位を(d)に示す.これより,(c)の元となった瓦破片と瓦(a)は粘土に同一の型を押し付けてレリーフを成形した同笵瓦であることが判明する.

(a)瓦(奈良元興寺古代円形飾)           (b)拓本画像      

(c)同笵瓦破片の拓本画像               (d)マッチング箇所    


図5 コンピュータ合成した拓本画像と同笵照合




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