■3. 三次元イメージの活用

 本章では筆者らが行った三次元イメージの活用事例を幾つか紹介する.

 3.1 形状比較と同笵(どうはん)分析

 考古学研究では遺物の型式学的研究が基本であり,異なる遺物間での造形や紋様の類似性の把握が肝要である.それが鋳型によって鋳造され,製造される青銅品(銅鐸,銅鏡など)などでは,同笵と呼ばれる同じ型から製作された遺物群の発見が研究上極めて重要な手掛かりとなる.それは遺物群が同一工房で同一時期に製作されたことが保証されるわけであり,もし同笵遺物が異なる遺跡から発掘された場合,それら地域間の交易関係や権力関係を断定できる決定的な証拠となり得る.

 ここでは一箇所から358本もの大量の銅剣,銅矛16本,銅鐸6個が出土したことで著名な島根県荒神谷遺跡の銅剣間の同笵関係を明らかにしようとして,断面形状を比較した例を図3に紹介する.同図(a)上部のセンサはレーザ光で剣を横切るようにガルバノミラー(首振りする小型ミラー)でスポットレーザ光をスキャンする.センサ自体を光学電動台で水平移動させ,剣全体の形状データを得る(b).刃は研磨され鋳型を反映しないため,剣の脊部を形状比較する(c).

(a)光切断法センサによる銅剣の形状計測

 

(b)柄部のワイヤフレーム像

 

(c)脊部断面の比較


図3 銅剣の同笵分析(3)

 



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