■6. お わ り に 様々な方面からのサイトへの反響によって,『ティップス先生』の影響の大きさと広さが確認できる.これらの反響は,制作段階での予想を大幅に越えるものである.大部分の大学教員にインターネットが普及した現状にうまく適合した発信方法であったといえよう. 『ティップス先生』への反響から,いくつかの点が示唆される.まず,多くの大学教員が授業改善を支援するサイトに関心を持っているということである.近年では,FD活動として組織レベルでの大学教員の研修が各大学において実施されつつあるが,大学教員の個々のレベルでも,各自の教育活動を改善しようとする意欲が高いということを示しているといえよう.また,そういった教育改善へのニーズの内容も,大学教員の間で多くの部分が共通している可能性が高いと考えられる.『ティップス先生』は,名古屋大学の教員を念頭において制作されたものであるが,学外の大学教員からも多くのアクセスがあり,反応も良いようである.名古屋大学の教員が直面する問題を解決するためのヒントやノウハウの多くが,一般的な大学教員に対しても有効であったことを示している. 最後に,ティーチングティップスを有効に利用されるための教育環境の条件について指摘したい.大学全体の教育改善のためには,教員の個々の努力に加えて,それを支援する制度や組織的な取り組みが必要である.その一つは,大学全体の教育目標の明確化である.学生にとって学習内容の重複や不足のない整合的な目標をもったカリキュラム構成が必要である.また,教材開発に関する支援,メディア機器の充実,ティーチング・アシスタントや専門家などの授業協力者の制度,定期的な研修制度などの教育環境の充実を図る必要がある.大学がこのような教育環境を準備できれば,ティーチングティップスによる個々の教員の授業改善が大学全体の教育改善につながるのであろう. ■文 献
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