電子情報通信学会会誌

Vol.85 No.2 pp.81-87
2002年2月
近藤倫正 正員  東京商船大学情報システム設計工学講座
E-mail kondo@ipc.tosho-u.ac.jp

Signal Processing Technology in Remote Information Sensing Systems.
By Michimasa KONDO, Member (Information Systems Engineering, Tokyo University of Mercantile Marine, 135-8533 Japan).







Abstract
 レーダ,ソナー,航法システム等に代表される遠隔情報センシングシステムについて,SN比,分解能及び状況への適応というシステム性能の根幹を形成する3要素の改善への信号処理技術による取組みを紹介する.代表技術として,距離方向の分解能を改善するパルス圧縮技術,クロスレンジ方向の分解能を改善するドップラーフィルタ,時間・空間の変動に適応する時空間適応処理方式を取り上げ,これらがSN比に配慮しつつ目的を達成する点に注目する.更に超解像についても言及する.

キーワード:レーダ,パルス圧縮,ドップラーフィルタ,時空間適応処理,超解像

■1. ま え が き 

 遠隔情報を収集するセンシングシステムは,光波・電波レーダ,ソナー,電波航法システム等があり社会インフラや関係分野のキーシステムとして活躍している(1),(2)
 
 これらのセンシングシステムにディジタル信号処理技術が適用され始めて30年余りが経過した.この間,1980年ごろに人工衛星に搭載された合成開口レーダで得られた画像がディジタル信号処理によって見事に再生されたのをきっかけにその威力が明らかとなってきた.以後信号処理技術によって高分解能化,適応化,等の機能・性能が急速に向上してきた.この種のシステムの共通の開発目標は,対象の検出,認識,識別能力の向上にあり,現在では,1,000kmの上空から数mの分解能の電波画像を得ることや,対象及びその周辺環境の状況に応じた柔軟な処理を行うことができる.

 本稿では,遠隔情報センシングシステムにおける現状の信号処理技術の活用状況を,分解能セルの形成と時空間適応処理に焦点を当てながら述べるとともに今後の研究方向にも触れる.




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