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高等教育機関におけるネットワーク運用ガイドライン
- 健全なネットワーク社会とリスク管理 -  三 島 健 稔
4、ガイドライン

先に示した著作権問題は偶然であるが,まず,緊急性の高い高等教育機関を対象とするガイドラインを策定することになった.これは,各々の機関がその特性を盛り込んだガイドラインを策定する支援になるものである.

更に,一般の便利のためには,本ガイドライン[1]に沿ったモデルを示す必要がある.これは各々の機関の特徴や規模により異なったものになることは想像に難くない.WGではおおむね3種類ほどになると考えている.その外,検討すべきことは少なくないが,それらは最後にまとめることにする.

以下に,本ガイドライン[1]の梗概により全体像を概観することにする.



4.1 ネットワークの運用ポリシーと体制

高等教育機関における健全なネットワークの運用においては,トップの毅然とした姿勢が最も重要である.このためにはネットワークの運用ポリシー(以降,情報セキュリティポリシーを含めてポリシーと呼ぶ)を策定し,そのポリシーを実行するための体制を確立しなければならない.

ポリシーとは,各機関が,どのような情報資産を,どのような手法によって保護し活用するのかを明らかにし,併せて各機関のネットワーク運用に対する取組み姿勢を示すものである.例えば,ネットワークの管理と表現の自由や通信の秘密は衝突する場面があるが,それらをいかに調整するか,あるいはネットワーク利用者の守られるべき利益(権利)と制限(私的利用,商用利用等)をどのように区分するか,違反行為に対する処罰をどのように考えるかなどを明確にしたものである.

このポリシーを基にネットワークの管理者や利用者の具体的な行動規範を規定したものとしてネットワーク運用実施要領(以降,規定と呼ぶ)を策定し,これら規定の遵守を求めることとなる.また,必要に応じて各種対応マニュアルや教育カリキュラムなどを作成し,ネットワークにかかわる者の便に供する.これらの関係は,図2のとおりである.



図2 運用ポリシーの位置付け
運用ポリシーに従って実施要領を規定する.影響の伝搬速度の速さに的確に対応するために各種マニュアルやカリキュラムが重要である.

これらのポリシーや規定を策定するためには,ネットワークの運用と管理に責任を持つ組織・体制を確立しなければならない.[1]では,関係部局の長(総括責任者),情報システムの管理責任者(技術責任者)及びネットワークの運用・管理に関する専門的知識を有する者で構成する組織(ネットワーク運用委員会),エンドユーザとしての利用者を基本的な構成と考えている.しかし,総合大学等では,部局(学部等)ごとの独立性が高く,単純な構造による運用が困難である場合も多い.

また,大学では対外接続を担っている部局(情報基盤センター,情報処理センター等)が存在するのが一般的である.

このような場合,対外接続を担っている部局の総括責任者が,各部局の総括責任者と技術責任者を招集して,「全学ネットワーク運用委員会」(図3参照)を設けることが考えられる.本委員会の長(全学総括責任者)は,全学的に責任を持つ者として学長や副学長相当の者が望ましい.

図3 ネットワーク運用管理体制  
総合大学等では各部門の責任者による全学ネットワーク委員会を設ける.責任の明確化のために「基本的な体制」を単位にして構成し,委員長には学長/副学長が望ましい.

なお,図3は「基本的な体制」と称する責任体制を明確にする単位によって構成することが望ましい([1] 参照).組織は複雑になるに従って,その複雑さ故に責任体制が不明になる傾向がある.「基本的な体制」は,それを防止するのに有効であろう.

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