■7. 製造作業規定から製品品質規定へ

 もう一つ旧来の測量・図化の伝統と大きく異なる点は,これらの標準には“データの作り方”についての規定がなく“データの品質の評価”についての原理や手順が規定されていることである.技術革新が目覚ましく進む世の中で,その成果を取り入れることを妨げるような“規制”(「これこれのデータはどのような機器を用いてどのような手順で作業して作らなければならない」といったようなこと)は,新時代の国際標準・国内標準にはなじまない.そうではなくて,製品の品質が良ければそれでよい,つまり「結果良ければすべて良し」の考え方である.もっとも,良質の製品を作るにはどのような工程に従えばよいかという問題は,各生産者が工夫すべきことであって,それも自由競争の一つの側面なのであろうが.


■8. お わ り に

 筆者は公的な立場から空間データの標準化の仕事にかかわることも少なくないが,本稿で述べたことは,あくまでも,一研究者・学者としての個人的な意見・見解であり,筆者の不勉強の故の誤解,重要な点の見落としも少なくないと恐れる.「1. はじめに」でも触れたように,GISは新時代の情報社会基盤として最も重要なものであるだけに,その広がりは広く深さは深く,この稿を書きつつ筆者の非力をつくづく思い知らされた.もちろん,筆者がGISにかかわってきた三十有余年の間に,多くの方々から多くのことを教えて頂いた.一々お名前を挙げるスペースはないが,それらの方々には心から感謝致します.

 

いり   まさお
伊理 正夫 (正員:フェロー)
 昭35東大大学院数物系博士課程了.工博.以後,九大助手・助教授,東大助教授・教授,中大(理工)教授を経て,現在東大名誉教授,(財)日本測量調査技術協会会長.ネットワーク・離散システム・数値計算・GIS等の分野における研究・教育に従事.論文・著書・受賞(章)多数.


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