■2. ISDB-T方式の特徴
地上ディジタル放送方式には,世界的には三つの方式がある(表1)(2).米国のDTV(Digital
Television)方式で用いられているシングルキャリヤ方式に対し,欧州のDVB-T(Digital Video Broadcasting
for Terrestrial)方式及び日本のISDB-T方式で用いられているOFDM(Orthogonal Frequency Division
Multiplexing)方式は,様々な方向から電波が反射して到来する多重伝搬路に適したマルチキャリヤ伝送方式の一つである.OFDM方式は,欧州で開発されたディジタル音声放送(DAB:Digital
Audio Broadcasting)において採用されたのを端緒に,ディジタル放送のほか無線LANなどの伝送方式としても採用が進んでいる.
表1 地上ディジタル放送方式の比較
DTV方式は主に米国,DVB-T方式は主に欧州,ISDB-T方式は日本で採用されている.
項目/方式
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DTV
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DVB-T(注1)
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ISDB-T(Mode 3)
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信号帯域幅
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5.38MHz(−3dB)
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5.64MHz
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5.572MHz
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送出キャリヤ数
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1本
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2k Mode:1,075本
8k Mode:6,817本
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5,617本
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変調方式
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8-VSB
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QPSK-OFDM,
(MR-)16QAM-OFDM,
(MR-)64QAM-OFDM(注2)
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DQPSK-OFDM,
QPSK-OFDM,
16QAM-OFDM,
64QAM-OFDM
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有効シンボル長
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92.9ns
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2k Mode:301.889μs
8k Mode:1.207556ms
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1.008ms
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内符号
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トレリス符号化(2/3)
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畳込み符号
(1/2, 2/3, 3/4, 5/6, 7/8)
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畳込み符号
(1/2, 2/3, 3/4, 5/6, 7/8)
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内符号用
インタリーブ
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時間
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ビット及び周波数
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ビット,周波数,及び時間
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外符号
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RS(204, 187)
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RS(204, 188)
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RS(204, 188)
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外符号用
インタリーブ
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バイト
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バイト
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バイト
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情報レート
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19.39Mbit/s
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3.69〜23.5Mbit/s
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3.65〜23.2Mbit/s
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(注1) DVB-Tは6MHz仕様のものを記載.
(注2) MRはマルチレゾリューションの略で,信号位相点の配置を変化させる方式.使用することも可能.
ISDB-Tは,帯域幅約430kHzの「セグメント」と呼ばれる単位で構成される(図3).ISDB-Tには,13個の連続したセグメントで構成される地上ディジタルテレビジョン放送用の広帯域ISDB-T(表2)と1個または3個の連続したセグメントで構成される地上ディジタル音声放送用の狭帯域ISDB-T(表3)とがある.固定受信や移動受信など伝送パラメータが異なるサービスを含む場合には,この「セグメント」単位で伝送パラメータを変ることができる.このような構成をとることなどにより,ISDB-T方式は次に示すような特徴を持つ.
@ ハイビジョンサービスが可能
A 多番組の標準テレビサービスが可能
B 移動体向けサービスが可能
C SFN(Single Frequency Network:単一周波数ネットワーク)による周波数有効利用
D 階層伝送による柔軟な番組編成
E 衛星ディジタル放送(ISDB-S)との共通性
F 地上ディジタルテレビジョン放送と地上ディジタル音声放送との共通性
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図3 ISDB-Tにおけるサービスとセグメント構成の例
様々なサービスに対しTV放送(広帯域)では13個,音声放送(狭帯域)では1個または3個のセグメントによる柔軟な編成が可能.
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表2 地上ディジタルテレビ放送(広帯域ISDB-T)の伝送パラメータ
広帯域ISDB-Tにおいては,13個のセグメントを用いてハイビジョンから移動受信向けサービスに対応できる伝送パラメータを柔軟に組むことができる.
伝送パラメータ
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Mode 1
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Mode 2
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Mode 3
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OFDMセグメント数
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13
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帯域幅
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5.575MHz
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5.573MHz
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5.572MHz
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キャリヤ間隔
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3.968kHz
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1.984kHz
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0.992kHz
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キャリヤ数
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1,405
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2,809
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5,617
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変調方式
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QPSK, 16QAM, 64QAM, DQPSK
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有効シンボル数
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252μs
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504μs
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1.008ms
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ガードインターバル長
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有効シンボル長の1/4, 1/8, 1/16, 1/32
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シンボル数/フレーム
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204
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時間インタリーブ
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各設定の最大値0, 約0.13, 0.25, 0.5sの4種
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内符号
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畳込み符号(1/2, 2/3, 3/4, 5/6, 7/8)
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外符号
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RS(204, 188)
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情報ビットレート
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3.65Mbit/s〜23.23Mbit/s
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表3 地上ディジタル音声放送(狭帯域ISDB-T)の伝送パラメータ
狭帯域ISDB-Tにおいては,1個または3個のセグメントを用いて移動受信向けの音声及びデータ放送などのサービスが可能である.
伝送パラメータ
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Mode 1
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Mode 2
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Mode 3
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OFDMセグメント数
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1または3
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帯域幅
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1セグメント
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432.5…kHz
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430.5…kHz
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429.5…kHz
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3セグメント
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1.289…MHz
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1.287…MHz
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1.286…MHz
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キャリヤ間隔
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3.968kHz
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1.984kHz
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0.992kHz
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キャリヤ数
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1セグメント
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109
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217
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433
|
3セグメント
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325
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649
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1297
|
変調方式
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QPSK, 16QAM, 64QAM, DQPSK
|
有効シンボル数
|
252μs
|
504μs
|
1.008ms
|
ガードインターバル長
|
有効シンボル長の1/4, 1/8, 1/16, 1/32
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シンボル数/フレーム
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204
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時間インタリーブ
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各設定の最大値0,約0.13, 0.25, 0.5, 1.03sの5種
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内符号
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畳込み符号(1/2, 2/3, 3/4, 5/6, 7/8)
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外符号
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RS(204, 188)
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情報
ビットレート
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1セグメント
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280.85kbit/s〜1.787Mbit/s
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3セグメント
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0.842Mbit/s〜5.36Mbit/s
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