■6. “火の玉”名所巡り

 日本には,その昔,火の玉と関連した,鬼火,狐火,不知火と呼ばれる“怪光”が見られる名所があちこちにあった.国際会議が開催された新潟県津川市もその一つである.残念ながら環境破壊が進んだ日本ではほぼ死滅してしまったが,米国には“怪光”伝説で有名な場所がまだ幾つか残っており,たいてい南北戦争やネイティブアメリカンの幽霊伝説として伝わっている.筆者も怪光伝説と名所の地形との間に関連がないか,現地調査をしたことがある.夏休みの肝試しには少し予算がかかるが,“怪しい”ことにドキドキワクワクしたい方のために観光案内を兼ねて御紹介しよう.詳しくは個々名所のホームページを参照して頂きたい.

 (1) マーファの怪光(Marfa Mystery Lights)
 テキサス州南部メキシコ国境近くの町マーファの観光スポットの一つで,“怪光”は日本のテレビ番組でも何度か取り上げられた.国道沿いにMarfa's Mystery Lights Viewing Area: Night Time Onlyという“怪光”見物指定場所があり,ここに行けば毎夜,荒野の向こうに“怪光”がほぼ必ず見える.怪光の正体は省略するが参考記事が文献(14)で読める.ビデオ撮影も可能.毎年9月のレーバーデイに火の玉フェスティバルがある.

 (2) ホーネットの幽火(Hornet Spook Lights)
 オクラホマ州境近くのミズーリ州ジョプリン(Joplin)近郊のホーネットという村を通る図7のような未舗装の道路,“悪魔の遊歩道(Devil's Promenade)!”に出る怪光.筆者は夏休み8月に訪れた.地元の通行人に聞いたら
「25年間住んでいるが見たことないなあ」
との返事だったが,めげずに漆黒の丑三つ時“悪魔の遊歩道”で張り込んでいたら“幽火”が出現した!これが伝説の“幽火”と同じものかは不明だが,“幽火”出現の様子や動き方はホームページの伝説のそれらとよく似ていた.正体を確かめるべく“幽火”を追いかけて行ったところ,道路両脇の木々の葉の隙間から見え隠れする農家の水銀灯と蛍だった.この“怪光”は夏に行けば見えるし,日本からの到着直後なら真夜中丑三つ時も時差ぼけで気にならない.淡い光なので普通のビデオ撮影はかなり難しい.


図7 ミズーリ州ホーネットの“悪魔の遊歩道"

図7 ミズーリ州ホーネットの“悪魔の遊歩道"  漆黒の丑三つ時,
遠方の道路両側の葉陰から“怪光”が現われる.“怪光”は動かないのだが,
凝視していると心理学的錯覚で伝説に出てくるような動きをする.蛍も飛ぶ.


 (3) ブラウン山の怪光(Brown Mountain Lights)
 ノースカロライナ州シャーロットから北西約80kmにあるブラウン山に伝わる伝説の怪光.しかし現在では地元でも忘れられた伝説.地元のガソリンスタンドのお嬢さんに聞いたら
「ブラウン山の怪光?私もまだ見たことがないわ.見えるとは保証できないわよ」
と言われてしまった.頑張ったが,やはり怪光は見えなかった.ばち当たりなことにブラウン山は現在オフロード・サーキットエリアになっていて,これでは本物の怪光が現われてもモトクロスオートバイやバギーのライトと区別するのは困難であろう.怪光伝説の時代は終っていた.ネイティブアメリカンの霊も悲しんでいるに違いない.

 皆さんも是非一度,“怪しい”研究を.

 謝辞 本研究で御協力頂いた本学田中雅宏助教授,並びに小久保慎治氏をはじめとする研究室の本学卒研生諸君に感謝します.また,本研究に助成金を頂いたJAPAN SKEPTICSに感謝します.

 


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