■5. 三次元問題

 図1のような二次元問題よりもう少し現実的な三次元の自然環境を考えた.図5のように一辺が約1波長の誘電体を約7×7×7(波長)の空間に160個ランダムに置いた屈折率1.5の誘電体立方体による電磁波散乱三次元シミュレーションを行い電磁波の局在と増強を調べた.方法として体積積分方程式(11)を使った.図6に図5のあるxy 断面の電界強度を示す.立方体外部だけの電界強度を示し,黒四角は立方体断面である.パラメータをうまく選ぶと図6のように最大電界強度が入射波の約60倍になる結果が得られ,やはりよく似た現象が起る.この結果は2001年にセントルイスで開催された第7回火の玉国際会議(ISBL2001)で発表し好評を博した(拍手で分かった).プロシーディングに論文原稿(12)を提出したが,どういうわけかいまだ出版されていない.このとき,火の玉研究で有名なオランダのDijkhuis博士がフラクタル構造の散乱体による局在を是非調べるべきだ,とフラクタル立方体の図を示しながらアドバイスしてくれた.しかし,本業の“怪しく”ない研究にかまけていたら,今年1月の新聞に,これと関連した実験の記事を見つけてビックリした(13)


図5 ランダムに置かれた誘電体による散乱

図5 ランダムに置かれた誘電体による散乱

図6 図5の1断面における電界強度絶対値の分布

図6 図5の1断面における電界強度絶対値の分布
矢印で示すスポットの電界は入射波の約60倍.



 ランダム散乱体に起因する電磁波の局在増強が,果たして自然界における“火の玉”の正体かは今後の研究を待つしかない.“火の玉アンダーソン局在仮説”をこれ以上進めるにはマイクロ波を使った実験を行う必要があるだろう.図5のような散乱体近傍の自由空間にマイクロ波放電を起すことができれば,本物の火の玉かは別として,大変“怪しく”かつ学術的にも興味深い現象になるに違いない.というのも,ランダムやフラクタル媒質中の電磁波の局在増強は,現在,多くの研究者に興味が持たれている“怪しく”ない研究テーマの一つでもあるからである.

 


4/6

| TOP | Menu |

(C) Copyright 2004 IEICE.All rights reserved.